生産が難しい「iPad mini」の液晶とパネルとタッチパネル

 10月23日には、「iPad mini」が発表された。「iPhone 5」と同じくハードウエアの仕様などは事前想定通りであり、全くサプライズはない。少し驚いたのは、通称となっていた「iPad mini」がそのまま正式名称となったことである。本製品は7.85型アモルファスSiベースのIPS液晶パネル(解像度XGA、164ppi)が採用されており、7月から生産中である。ただし、「iPhone 5」と同様、「iPad mini」も液晶パネルとタッチパネルの生産がボトルネックとなっている。液晶パネルは解像度こそ「新しいiPad」(264ppi)より低いものの、超狭額縁の設計となっており、光漏れなどの問題が生じている。また、生産はG5の古い工場とはいえ、超薄型の0.4mmガラスを採用していると見られ、ハンドリングが容易ではない。

 パネルはモジュール生産能力で韓国LG Display社が250万/月、台湾AU Optronics社(AUO)が150万/月程度と見られるが、初ロットはほとんどLG Displayからの供給となろう。AUOは8~9月はG5(L5D)で1万5000以上(パネルで90万相当)のガラスを投入しているものの、9月のパネル出荷は10万以下の少量にとどまったと見られる。AUOの場合は、IPS方式のタブレットPCパネルの大量生産の経験がないことも、歩留まり改善に苦戦している一因と見られる。LG Displayは相対的には順調な立ち上げとなっているが、9月の出荷は70万以下にとどまったと見られる。現在当社が前提としている年内1100万の生産については、10月以降の大増産を前提としている。

 タッチパネルも同様。関連材料はほぼ計画線の出荷状況と見られるが、タッチパネル完成品を担う日本写真印刷からの出荷状況は想定を下回っており、液晶パネルと同じく歩留まり改善に腐心しているものと考えられる。Appleは今回初めてガラスではなく、フィルム・タイプのタッチパネルを採用、その感度や薄さ、軽さなど、製品の出来栄えには大いに注目したい。同社製品のタッチパネルが外付けのガラス・タイプ、フィルム・タイプ、もしくはインセルと、今後どの方向に進むのかによって、バリューチェーンの構図が大きく変わってくるためである。