新ロケフリが大ヒット

 ソニー社内の雑然とした雰囲気とは関係なく、ロケフリ部隊にとってはパソコン向けに新ロケフリの開発を急ぐ必要があった。日本市場に12型のLF-X1を発売して1年、数多くのメディアで取り上げられたものの、約14万円という実売価格と限られた宣伝広告費の問題がネックとなり、話題はあったものの売り上げは苦戦する状況が続いていた。挽回の切り札として、新ロケフリに期待していたのだ。液晶ディスプレイを搭載しないことで低価格化を図れるだけでなく、海外出張などの際にも自宅のテレビを楽しめるようになれば、今までとは比較にならないほど売れるという自信があった。

パソコン向けのロケーションフリーベースステーション「LF-PK1」
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 経営陣の刷新から約半年後となる2005年9月6日、パソコン向けのロケーションフリーベースステーション「LF-PK1」を発表した。これで、従来の専用機からノート・パソコンなどに対応することで、ロケーションフリーワールドの構築という冒頭に掲げた新たなステージに突入したのだった。

 LF-PK1の発売日は、2005年10月1日。価格の大部分を占めていた液晶ディスプレイが不要になったことで、実売価格はLF-X5の半額以下となる約3万円を実現できた。その結果、発売と同時に品薄になるほどの人気を博した。発売から1週間で、いきなり楽天市場の家電部門でトップになったほどである。

PSPにも対応へ

 もちろん、ロケーションフリーワールドの拡大は、ノート・パソコンだけが対象ではなかった。その一つが、久夛良木さんと約束していたプレイステーション ポータブル(PSP)へのロケーションフリー機能の搭載であった。ソニーコンピュータエンタテインメント(SCE)の都合もあり、パソコン向けのLF-PK1と同時に発表できなかったものの、10日ほど遅れとなる2005年10月13日に専用ソフトウエアのダウンロードが開始される運びとなった。これにより、PSPのメニュー画面(クロスメディアバー)にロケーションフリーのアイコンが表示されるようになったのである。

 PSPへのロケーションフリー対応の開発で、最も苦労したのが操作性である。ゲーム機であるため操作キーの数そのものが少なく、いかに簡単に操作するかを考える必要があった。SCEとロケーションフリー部隊が共同で、何度も試行錯誤を重ねることで何とか提供できるようになったのである。