次世代工場 工場の将来像が見える
 

第1回:マザー工場システムが変化を求められているわけ(上)

兵站線の伸び

中川 功一=大阪大学大学院経済学研究科講師
2012/10/15 00:00
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 「予想以上に速いスピードで、パーッと世界展開と車種展開が広がりました。そして、海外26カ国に51の事業体を持ち、年間の生産台数が800万台という段階に来ていたわけです。…(中略)…。これだけグローバル展開が進むと、兵站(へいたん)線を整えなければならない。事実、兵站線は伸びきっています。…(中略)…。これまでのように本社が世界中を支援し続けると、疲れ切ってしまいます」〔トヨタ自動車社長(2005年当時)の渡辺捷昭氏〕。

 トヨタ自動車では、2000年半ば頃から、経営トップ陣が頻繁に「兵站線が伸びきっている」という表現を使うようになっている。世界中に多数の拠点を抱えたことで、末端の拠点まで支援の手が届きにくくなったり、本国拠点の負荷が過重になるなどして、グローバル経営に支障をきたすようになっているのである。事実、21世紀に入ってから、トヨタ自動車は世界各地でたびたび大規模な設計・製造品質に関わるリコールを行っている。そしてまた、近年では、トヨタ自動車のみならず日系製造業各社がグローバル化に伴う組織の疲弊を訴えるようになっているのである。

兵站線の伸びとは何か

 「兵站線」とは、元来は軍事用語であり、情報・物資の配給のために、各部隊と指揮本部を結ぶ連絡経路を指す。転じて、グローバル経営の現場では、個別の海外拠点を部隊に見立て、本国拠点を指揮本部とみなした上で、本国拠点が海外拠点に行う経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)の支援範囲を指して兵站線と呼んでいる。

 したがって、グローバル経営の現場で「兵站線が伸びきっている」とは、日本企業のグローバル展開が進み、海外拠点が急増する中で、本国からの支援が十分に行き渡らなくなりつつある状況を指している。かつて19世紀には、常勝の戦略家とうたわれたナポレオンが、雪深いロシアでの戦争において、伸び切った兵站線の破綻によって歴史的な大敗を喫している。また、第二次大戦で連合国側と枢軸国側の勝負を分けたのも、兵站線の構築度合いによるところが大きいとされる。現代のビジネスに、そのまま議論を適用できるわけではないが、支援を必要としている海外拠点に十分なケアを行えなければ、グローバル競争で後手を踏むのは避けがたいところである。

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