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写真◎新しい攪拌機で攪拌している様子。底にあったプラスチックボールがグルグル回りだす。村田氏はこの攪拌機を開発し、エディプラス(本社さいたま市)という会社を設立、代表取締役を務める。
写真◎新しい攪拌機で攪拌している様子。底にあったプラスチックボールがグルグル回りだす。村田氏はこの攪拌機を開発し、エディプラス(本社さいたま市)という会社を設立、代表取締役を務める。
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 この技術の評価を依頼された、ある特許の専門家はその時の様子を次のように述べます。「とにかく興奮しました。私は特許の世界に40年いますが、基本特許を目にしたのはこれが初めてです。基本特許というのは、どこをどうしても「マネしようがない」「逃れようがない」「つぶしようがない」の三拍子揃ったもの。大抵は何かの蒸し返しで、一番悪いのは重箱の隅を突いたようなものです。これまで特許をごまんと見てきましたが、まさか私の目の前に、一生出合うことはないだろうと思っていた基本特許が現れるとは…」。

 村田さんによれば、「穴が空いていて、グルグルと回すと遠心力が発生するものは全て権利」なんだそうです。このシンプルさこそ、この技術が基本特許であることの証しでしょう。これほどの大発明、会社が全面的にバックアップするなど、さぞや充実した開発体制の中で生まれたのだろうと思いきや、社長からは「時間外にやれ、ポケットマネーでやれ」と言われたそうです。「開発費には飲み代を充てました。おかげさまで、飲みに行かなくなり健康になりました」と笑う村田さん。

 そんな村田さんが孤軍奮闘する開発の様子は、昨日発売になった『日経ものづくり』2012年10月号で詳しく紹介しています。その中で、村田さんは「失敗する怖さなんて大したことありません。失敗したら、原因を探って直せばいいのですから。それよりも成功していないことの方がよほど怖い。チャレンジを忘れてしまいますから」と仰っています。自分は成功していない――。大きな仕事は、こんな意識があって成し遂げられました。