[画像のクリックで拡大表示]

 ワゴンRでは、減速エネルギをLiイオン2次電池に蓄えるほか、エアコン使用時の実用燃費を上げるためにエバポレータに蓄冷材を組み込んでいるのも特徴です。エアコンをオンにするとエバポレータの一部に詰めたパラフィン系の蓄冷材が数分で凍ります。アイドリングストップ時に、エンジン駆動するエアコンのコンプレッサが止まるため送風だけになりますが、冷媒の温度が上がると蓄冷材が融けて冷媒を冷やし続けます。このため、冷気が長い間出続けるのです。外気温が35℃のときには、通常のアイドリングストップ機構では室内温度の上昇が速く、従来は30秒程度でエンジンが再始動していましたが、今回のシステムを使えばそれが1分程度にできるといいます。

 試乗では外気温が30℃くらいでしたが、エアコン温度を25℃に設定して、どれくらい冷気が続くか試してみました。当初、1分程度でエンジンが再始動するのかと待っていましたが、エンジンは1分30分たってもかからず、それなりに冷たい空気が吹き出していました。最終的にはエンジンが始動したのは、約2分後とずいぶん後のこと。信号待ちはもちろん、踏み切りでの停止時でもこのシステムが有効なのを実感しました。このシステムを試したいがために、最後の5分くらいはエアコンを付けて運転したので、平均燃費は最終的に27.7km/hに悪化しました。

 アイドリングストップ機構は頻繁に停止する都会では有効だが、走り続ける郊外ではあまり意味がないという話をよく耳にします。しかし、ワゴンRの場合、減速時のエネルギ回生でメータパネルやストップランプの電力をまかなうことで、通常走行時の発電を抑えます。さらに完全に停止するときも速度13km/hからエンジンの回転を止めてアイドリングストップの効果を高めています。このシステムはまだワゴンRにしか搭載しておらず、JC08モードで30.2km/Lを実現している「アルトエコS」には採用されていません。もし、このシステムをより軽く、背の低いアルトエコSに採用したら、さらに燃費が向上することは間違いないでしょう。ハイブリッド車ではなくてもJC08モードで30数km/Lの世界が当たり前になるかもしれません。