最近、データ・センター向けのSSD(solid state drive)技術について取材しています。データ・センターのサーバーではマイクロプロセサとストレージ(HDD)の間に大きな性能ギャップがあり、これを埋める技術としてSSDが利用され始めました。特にサーバーのPCI Expressスロットに接続するタイプのSSD(PCIe SSD)は、サーバーの能力を飛躍的に向上させる技術として注目を集めています。

 PCIe SSDの市場で先行する米Fusion-io社によると、同社の製品を導入したサイバーエージェントでは「アメーバピグ」サービスの運営に必要なサーバー台数を、それまでの96台から8台(実質は4台)に減らせたそうです。「PCIe SSDの導入から数年が経ち、現在はサーバーの負荷が3倍に増えたが、それでも十分に対応できている」(Fusion-io社)とのことでした。プロセサとストレージの性能ギャップを埋めるだけで、これだけの効果が得られるというのは驚きです。

 PCIe SSDの価格は、数百Gバイト品で数十万~数百万円と「サーバー本体よりも高い」(あるSSDベンダー)そうですが、代わりにサーバーの台数や設置面積、消費電力を大幅に削減できるため、データ・センター事業者からはむしろ安いと思われているようです。PCIe SSDはGバイト当たりの容量単価ではなく、IOPS当たりの性能単価や、寿命を考慮したGバイト書き込み当たりの単価など、新しい指標で評価され始めています。

 こうした変化は、新型の不揮発性メモリやSSDコントローラを開発するメーカーにとって朗報だと感じました。これまではデバイス単体のコストが重視されていましたが、新しいデバイスによってSSDの性能や寿命を大幅に伸ばすことができれば、データ・センターの運営コストを削減でき、デバイスのコスト増分を相殺できるからです。

 実際、それを狙った技術として、高速・長寿命のMRAM(磁気メモリ)やReRAM(抵抗変化型メモリ)をNANDフラッシュ・メモリと組み合わせた「ハイブリッドSSD」の開発が進んでいます(関連記事)。MRAMやReRAMではコストの高さが大きな課題になっていますが、ハイブリッドSSDをデータ・センターで利用すれば、それを上回るコスト効果が期待できます。データ・センターの拡大とともに、こうした新技術が離陸する可能性にも注目したいと思います。

 なお、日経エレクトロニクスでは2012年10月1日号でデータ・センター向けの各種技術に関する特集記事を掲載します。ご興味のある方はご一読いただけますと有難いです。