今年の3月から生産性向上のテーマで現地の民間アパレルメーカーの支援を行っている。
中国には10年前にセミナーで訪問したことはあるが、コンサルティングは始めてである。
日系企業の中国工場におけるさまざまな悩みは聞いてはいたが、実際に現地企業を訪問してみると、文化、考え方や制度の違いで戸惑いの連続である。

 中国現地企業の悩みのひとつには離職率の高さが上げられるが、ご多分に洩れずこの企業でも離職率の高さに頭を悩ませていた。しかも、一般社員の離職率も高いが、管理職も簡単に会社を変わっていくというのである。これには驚かされた。話によると、1年間で半分近くの管理職が退社していったということである。さらに、一度退社した管理職が戻って来て、また管理職に復職することもよくあるというのだ。文化の違いを感じる。
 
 こういった離職率の高さも一因かもしれないが、もっと深刻なの問題がある。それは、経営者と現場の意識のギャップが非常に大きいことである。経営者の思いは非常に高く、日本のトップ企業のレベルまで到達させたいと考えている。その為、経営者は幹部社員を日本企業へ視察に連れて行ったり、常に目指す方向について話をしている。

 しかし、管理職の意識や現場の状態をみるとその想いと実態は相当に乖離している。
例えば、管理指標にしても経営者は目で見える管理を目指し、具体的な項目やフォームなどを指示している。しかし、工場幹部には思いも伝わっておらず、目的や活用方法を考えず言われたことをやり、指示された通りに作成するだけである。それでは、継続できずに尻つぼみになってしまう。

 また、実際の改善検討に関しても、制度の違いによる戸惑いを感じる場面があった。
工場のライン作業の効率化を目的に、現場を見てまわった時のことである。特定の担当者の前に仕掛品が山のようになっている。つまり、この工程がネックになっているのである。そこで、一部の作業を他の担当者に割り振るように提案した。するとそのラインの担当管理職からは次の言葉が返ってきた。「賃金が出来高制なので作業を変えると賃金が下がり、会社を辞めてしまう。この担当者はスキルが高いので辞められると困る」という話である。
日本では考えられないことである。

 その後、経営者の指示によりモデルラインの担当者の賃金制度が変更されたが、この新しい賃金制度には、管理職も含めて不満が出ており、ここでも経営者の思いは管理職、現場のメンバーに伝わっていないと感じる。

 このような状況の中、一気に効率、風土を替える事は難しいが、経営者の高い思いに少しでも近づけるように、現場の担当者と格闘の日々が続いている。