「これだけの内容を、表でしゃべることはめったに無い。少し前だったら、門外不出のものばかりだ」――。

 そう語るのは、日経エレクトロニクスが2012年9月13日(木曜日)に開催するテクノロジー・セミナー「トヨタ/デンソーの最新ロボット技術―ニッポンの次の基幹産業はこれだ!―」の講師陣の一人です。講師とのセミナー打ち合わせの際に、発表予定のプレゼンテーション・ファイルをノート・パソコンの画面に映しながら、そう打ち明けてくれました。

 確かに、なかなか立ち入れないような工場内部の映像や、測定データを組み合わせたグラフなどが多数盛り込まれていました。今回のセミナーでは、JASA(組み込みシステム技術協会)が主催しているということもあり、普段は公にしないような技術開発の成果を、披露いただけるとのことです。

 あまり表に出さない技術成果を、公に発表いただける理由についてさらに聞くと、そこには講師の強い思いがありました。「我々がロボット分野に、しっかりと本気で取り組んでいるということを示したい。そして、世界に先駆けた技術検討を進めており、競争力のある“強い”分野であることをもっと知ってもらう必要がある。それによって、周辺の技術開発が促進されることを願っている。また、業界が盛り上がることで、国も、積極的に動いてくれるのではないか。制度面などで、ロボット技術が発展する仕組みを作ってもらわないと、せっかく競争力があるのに、かつて来た道のように、この分野まで失いかねない。これは会社の上層部も理解している。だからこそ、普段はほとんどお断りしている講演を、今回はお引き受けすることにしたんです」と語ってくれました。

 別の講師の方は、「聴講者には、動画でも見てもらいます。でも、それだけじゃイメージできない部分もある。だから、実際にロボットを持っていきます。その場で動かしますよ」と、こちらも積極的でした。詳細な内容をご披露いただける理由については、「ロボット開発の現状を、ものづくりに携わっているみなさんにきちんと知っていただきたい。そこには、強い分野もあるが、もちろん弱い分野もある。ただ、このままうかうかしていると、いろんな部分が海外に持って行かれてしまう。そのぐらい、ロボット技術でも海外勢の取り組みは、スピードが速いんです」と、危機感をあらわにします。

 我々日経エレクトロニクスは、これまでどちらかというとテレビや携帯機器などの技術開発に関する技術セミナーを中心に開催しておりましたが、ロボット技術の市場の広がりとともに、読者の皆様からの強い要望を受けた形で、今回ロボット技術のセミナーを開催させていただきます。そこで、この分野の識者の皆様からお話を伺うと、多くの方が「日本のロボット技術が危機にひんしている」というご指摘を頂きました。技術的には進んでいるものの、規制や制度面で壁にぶつかっているというのです。また、こうした制度面が緩やかだったり、ビジネスに向いた形で整備されていたりする諸外国の企業が、猛然と追いかけてきているというものでした。

 テレビやスマートフォンなど民生家電の市場で、海外の企業の後塵を拝することが多くなる中で、ロボット技術は、日本のエレクトロニクス分野にとって貴重な有力産業の候補です。この分野は、なんとしても優位性を持ち続けなければ、技術や雇用機会の流出に歯止めをかけることができないのではないでしょうか。

 今回の技術セミナーでは、今、ロボット技術に求められる取り組み、競争力を持ち続けるための視点などについて、有識者の皆様に指摘いただく予定です。講師陣は、トヨタ自動車とデンソーウェーブ、首都大学などから、めったにお話を聞けない顔ぶれがそろいました。ロボットの技術開発の“今”を知る絶好のチャンスです。ぜひ、ご来場いただき、最新の技術動向を把握いただきたいと思っております。