2012年7月における台湾電子セクターの代表的企業41社の売り上げ合計はYOY(対前年同月比)で-1.8%、MOM(対前月比)で-3.9%だった。ドイツ証券(以下、当社)ではMOMで+0%±5ポイントを想定しており、実績は想定範囲内の下限近くとなった。米Apple, Inc.向けを中心としたEMS事業の好調が続いている、台湾Hon Hai Precision Industry社(鴻海精密工業、通称Foxconn)の売り上げはYOYが+8%、MOMでは+5%だった。ちなみにHon Hai Precisionを除いた各製品分野の代表的企業40社ベースでは、YOYが-6.2%、MOMは-7.8%だった。

 最終製品では、フラットパネル・テレビ、PC、携帯電話機と全アプリケーションで、需要が弱含む状況が続いている。繁忙期を控えているにもかかわらず、主要アプリケーションの大手ブランドは、一部を除いて在庫積み上げに慎重な姿勢を崩していない。その結果、EMS/ODM、部品メーカー、部材メーカーからなるバリュー・チェーン全体が生産を抑制することになり、意図せざる在庫がたまりにくい状況となっている。ただし、最終需要に改善の兆しがみられるか、主要ブランドが姿勢を変えない限り、「思ったより弱い」生産状況は続き、このまま今年を終えてしまう可能性を否定できない。

 iPhone5は2012年4月からようやく液晶パネルのバリュー・チェーンが動き始めたものの、主要供給メーカー3社のうち、韓国LG Display Co., Ltd.とシャープは2012年7月に量産出荷を行わなかった。懸念されていたタッチ・パネルの「インセル型採用」が少なからず歩留まりに影響を及ぼしているとみられるだけでなく、他にもいろいろなところでボトルネックがあるようだ。当初の最速タイミングから合計8週間遅れとの印象である。まず、8月中にLG Displayとシャープがどこまでパネルを出せるのか、一足先に量産出荷を開始したジャパンディスプレイが8月に生産をどこまで伸ばせるかに注目したい。

 リード・タイムなどから勘案すると、現時点の「最速スケジュール」は組み立てが8月開始、発表もしくは発売は9月下旬との見方に変更はない。が、発売前に1500万台程度の在庫が必要と仮定すると、9月中の発売は微妙なところであろう。