従来の半導体は、製造技術の微細化によって単位面積当たりのトランジスタ数を増やして機能を高めたり、チップサイズを縮めてコストを削減したりして進化してきた。誤解を恐れずに言えば、それだけをやってきたのが半導体メーカーだった。

 しかし意味理解においては、小型化した高機能なセンサーと、そこから出力される大量のデータが意味するところをリアルタイムに解析する仕組みが求められる。これらがそろって初めて、人のしぐさ一つが周囲の状況の中で何を意味するのかを理解できるのだ。そのためには複雑に絡み合うアプリケーションを整理し、高度に統合していく必要がある。当然、半導体メーカーだけで研究していたのでは不可能だ。今回の異業種と連携する協議会は、そうした点でも大きな意味を持つ。

 この意味理解によって、社会は全く別の次元に飛躍的に発展していくことになる。これまで、コンピューターの処理速度やデータ転送速度は飛躍的に高まってきた。それによって世界中の情報が一覧できるようになった。ただ、それだけでは社会の変革には限界があることがわかってきたとも言えるのではないだろうか。今後は、意味理解によって不連続な進化が起こる。その場の状況に合わせて人々が快適な生活を送れるように無意識のうちに半導体が察知し、処理してくれるという「スマート社会」である。それは家庭でも、オフィスでも、駅や道路などの公共の場でも、すべてが連携して行われる。

今後は「百年耐久」などを議論

 今回の協議会は、半導体メーカー以外の業種から10社の賛同を得て活動している。今後は、コンセプトの(2)~(4)、すなわち電力を必要としない「無給電」、いつまでも同じ品質で動作を続ける「百年耐久」、自ら新しいアプリケーションを導入して進化する「自己成長」についても、半導体業界と異業種の間で議論を重ねる予定である。

 異業種連携は市場を作り出す新しい仕組みである。そこに参加する企業が協力して新しいサービスを生み出せれば、その企業群は次の社会の先駆者となるだろう。半導体業界の働きかけで始まる異業種連携は、日本の半導体産業の復活への第一歩である。

この記事は日本経済新聞電子版日経BPクリーンテック研究所のコラム「クリーンテック最前線」から転載したものです。