五輪に合わせて3Dテレビが伸びているのはもちろん、コンテンツがあるからこそだ。中国国営のテレビ局、中国中央電視台(CCTV:China Central Television)は2012年2月、ロンドン五輪の3D放映権を獲得したと表明。五輪期間中、開会式と閉会式の他、陸上、競泳、飛び込み、体操など中国で人気の高い競技を中心に合計300時間を3Dで放映する。CCTVは2012年の元旦から3D専門チャンネルを開設し、3D番組の試験放映を開始しているが、ロンドン五輪を同年で最も重要な試験放送の1つとして重視しているという。

 さて、テレビ業界が五輪特需に期待を膨らませる中、当社のウェブサイト閲覧には会員登録が必要2週間無料で読める試用会員も用意)に掲載したテレビ関連の記事で最近、飛び抜けたアクセス数を稼いだニュースがあった。「鴻海、シャープ堺工場のパネル消化で必殺技 60型液晶TVを格安で社員に販売か」という記事だ。

 EMS世界最大手の台湾Hon Hai Precision Industry社〔鴻海精密工業、通称:Foxconn(フォックスコン)〕が、シャープと共同運営する旧シャープ堺工場で生産する大型液晶パネルを消化することを目的に、60型の大型テレビを自ら生産。2012年の中秋節(9月30日)前後から、台湾に住むフォックスコンの社員向けに格安で販売するという内容だ。

 最初にこのニュースを報道したのは台湾紙『経済日報』(同年7月31日付)。同紙の伝えた消息筋は、フォックスコンはこのテレビの価格を、台湾の平均的な60型テレビの4割程度に相当する4万新台湾(NT)ドル(約10万4000円、1NTドル=約2.6円)に設定したと指摘。この常識外れの低価格を実現できるのは、台湾の電気通信キャリア、Chunghwa Telecom社(中華電信)が提供するコンテンツサービス「マルチメディア・オン・デマンド」加入と抱き合わせ販売するためだと説明した。

 シャープは同年7月12日、世界唯一の第10世代液晶ラインであるシャープ堺工場を運営する「シャープディスプレイプロダクト(SDP)」の株式を、フォックスコン側に譲渡する手続きを完了したと公表。社名も「堺ディスプレイプロダクト(SDP)」に変更された。SDPの資本比率は最終的にシャープ、フォックスコンがそれぞれ37.61%になる。

 経済日報の伝えた台湾の業界筋は、「シャープ堺工場は60型以上の超大型パネルの生産を主力としており、シャープ、ソニーにテレビ用パネルを提供してきた。ただ、60型テレビは売価が10万NTドル以上と高いため市場の受けは芳しくなく、堺工場の稼働率低下と業績低迷をもたらす元凶になっていた」と指摘。その上で、「フォックスコンは堺工場で生産する液晶パネル、モジュールを50%引き取らなければならない。今回打ち出した台湾の社員向け激安テレビ販売は、堺工場の稼働率向上を刺激するために、堺工場の経営権を正式に握ったフォックスコンのトップ、郭台銘董事長が放った、最初の必殺技だ」と述べた。