今回紹介する書籍
題名:只为成功找办法,不为失败找借口
著者:梁子
出版社:中華工商聯合出版社
出版時期:2012年4月

 今回から取り上げるのは『只为成功找办法,不为失败找借口(成功するために方法を探せ、失敗の言い訳を探すな)』という自己啓発書。著者は「実戦派企業コンサルタント」とのことで、さまざまな事例を基に「如何に仕事で成功するか」ということを説いている。

 書名からも分かるように、本書の主張は以下の二つ。

① 言い訳をするな

② 問題には解決方法を見つけ出せ

 この主張だけを見るとあまり食指の動く内容ではないが、以下の3点で気になったので今回ご紹介させていただくことにした。

  • (1)巻末に付された「ゲーム」がおもしろそうだったこと
  • (2)掲載されているエピソードの多くがきわめて具体的であり、実際に応用可能だったこと
  • (3)言い訳と中国人気質について考察のヒントが得られたこと

 まず、本書の紹介に入る前に(3)に挙げた「言い訳と中国人気質」の関係について触れておきたい。中国人は言い訳が多い、というイメージは筆者のみならず多くの日本人が感じていることだろう。中国人と接することの少ない方でも、「偽ガンダム」「偽ディズニーキャラクター」に関する報道で「現地担当者」の繰り出す言い訳に唖然としたことがあるに違いない。

 このように彼らは実に多彩な言い訳を繰り広げる。その理由には「メンツ(体面)を重んじる国だから」「負けを認めると一族が根絶やしにされた歴史的事実が背景にある」などの説があるが、ともあれ筆者は「言い訳」と切っても切り話せない中国人に「言い訳をするな」という本書の主張はどのように展開されるのかに興味を持ち、本書を取り上げた。

 本書では「言い訳」に関して、興味深い分析がなされている。さすがに多くの企業にコンサルティングをしている著者だけあり、分析が明快で、表現も面白い。

  • ・言い訳する者は決して成功しない、成功する者は決して言い訳しない。(10ページ)
  • ・言い訳は失敗の温床。(97ページ)
  • ・口実を作って断るより、大変なことでも引き受けた方がいい。(99ページ)

 このように本書では言い訳の弊害をこまごま述べている。興味深かったのは書籍販売サイトでの本書に対する読者の感想である。コメントを書いている人のうち95%が最高の評価を付けており、コメントの内容も肯定的なものが多い。経済の発展と社会の成熟に伴い以前のように「言い訳」ですまないことが増えてきている所為かもしれない。

 筆者も長らく大学の日本語教育担当者として中国人学生と接してきているが、学生の言い訳を聞くことが減ってきている。ただ、その一方で、若者が言い訳をしなければならない状況を回避するためか挑戦をしなくなっているようにも感じる。単に「中国人が言い訳をしなくなった」、あるいは「言い訳しないことを良しとする人が増えた」と断じることはできないが、「中国人=言い訳が多い」という図式がそのまま当てはまらない世代や社会集団が増えているということはいえるだろう。