背景には、国内の大手自動車メーカーが海外に製造拠点を移す動きの加速がある。例えば、静岡県で進められている「浜松スモールビークルプロジェクト(HSVP)」では、周辺の大手自動車メーカーからの仕事が激減した部品や木型の業者が協力し合い、小型EVの産業化と普及によって地元・浜松の経済を活性化させようとしている(図2)。東京都の「すみだ新製品開発プロジェクト」や大阪府の「あっぱれEVプロジェクト」も、HSVPと同様な背景や趣旨から小型EVの開発と普及を目指す(図3)。

図2●Takayanagiの小型EV「ミルイラ」(撮影:テクノアソシエーツ)
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図3●淀川製作所の小型EV「Meguru(環)」(撮影:テクノアソシエーツ)
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 これらのプロジェクトに共通しているのが、開発や事業化を現在進めている小型EVが第一種原動機付き自転車(四輪)の車両規格に準拠していることだ。ただ、原付では法律により定格出力が0.6kWに限られていて非力である。また、乗車定員も1人で他に人を乗せられない。このため、使い勝手が良くないという課題がある。そこで2人が乗車でき、軽自動車と原付の中間に位置づけられる車両規格を認めて欲しいという要望が国に寄せられていた。国交省の超小型モビリティは、そういった要望に応えられる規格になることが期待されている。

「山寨汽車」の普及が加速する中国

 このように日本では超小型モビリティの規格化や産業化がまだ始まったばかりだ。ところが、すぐ近くに超小型モビリティがすさまじい勢いで普及し始めている地域がある。中国の山東省だ。

 中国は、自動車産業を育成する上でEVなどの電動車両を重視している。EVは内燃機関を動力源にするクルマに比べて部品点数が少なく構造が比較的簡単である。その上、日本や欧米の大手自動車メーカーもまだ技術開発の途上にあることもあり、技術力格差が小さい。このため、内燃機関を用いるクルマに比べると中国企業によるキャッチアップが容易と思われるからだ。