シャープが6月8日、電子機器受託生産(EMS)世界最大手、台湾Foxconn(フォックスコン=鴻海)社との提携を軸にした復活シナリオを公表した。中国市場におけるスマートフォンの販売で、コモディティー化した売れ筋価格帯のモデルについてはフォックスコンが、ハイエンドモデルについてはシャープがそれぞれ製造を担当。さらに、12年第1四半期に5割を切るまでに低下していたシャープ堺工場の稼働率を引き上げるため、フォックスコンが予定を前倒しして12年第2四半期から同工場で生産した液晶パネルの引き取りを始めるなどとしている。

上海のハイテク産業エリアである浦東の張江ハイテクパークにあるレノボの上海拠点。左手には同社のスマートフォン「楽Phone」の広告も見える
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 ところで、ブランドメーカーとEMS/ODMとの提携では、シャープ、フォックスコンに先行する形でもう一つ、大きな動きが進んでいる。PC大手の中国Lenovo(聯想)社と、ノートPC受託生産で世界第2位のODM、台湾Compal Electronics(仁宝電脳)社による、ノートPC生産合弁の設立である。

 Lenovoといえば、2004年12月、米IBM社からPC事業を買収したことにより一躍、世界のPC市場での存在感を増した。12年第1四半期の世界シェア(出荷台数ベース)では13.1%と米Hewlett-Packard(HP)社の17.2%に次ぎ第2位にまで躍進している(Gartner調べ)。

 11年、LenovoはPC世界シェアトップの奪取に向けた施策を矢継ぎ早に講じた。まず6月には家電・PCの独Medion社を買収。さらに同7月にはNECと合弁会社を設立する形でNECのPC事業を統合。同9月には、台湾Acer(宏碁)社で同3月まで最高経営責任者(CEO)を務めていたジャンフランコ・ランチ氏を顧問として迎え、欧州・中東・アフリカを統括するEMEA地区の責任者に据えた。そして同9月のCompalとの提携である。PC業界でブランドメーカーが受託生産メーカーと生産合弁を設立する初のケースとして注目を集めた。

 両社が拠点設立の地に選んだのは中国安徽省の省都(県庁所在地に相当)合肥市。安徽省と聞いて、頭の中にすぐに何らかのイメージがわく日本人は多くないだろうが、三国志ファンには魏の曹操の出身地として馴染みの深い土地。さらに、世界遺産ファンの間では、黄山の麓に広がる明代から残る石畳と白壁、黒屋根の古村落群のある所として名高い。ただ、日本人はもとより、中国人の中での一般的なイメージは長らく、「経済的に立ち後れている土地」というものだった。エレクトロニクス業界にとっては生産拠点や消費地としてではなく、上海や江蘇省などの生産拠点に安価な労働力を大量に供給する省として認識されていたわけだ。

 ところが2002年、一族が安徽省出身の胡錦濤氏が中国トップの共産党総書記に就任すると情況が変わり始める。労働力の供給源という情況に変わりはないものの、「最高権力者のお膝元」ということで、安徽省に資本が集まり出したのである。合肥には中国BOE(京東方)社が中国初の第6世代液晶パネルラインを2010年に設立するなど、近年、中国有数のFPD産業の集積地としても注目を集めている。