今までのPLMとは

 本コラムの趣旨を改めていうと、今後の日本のものづくりの方向性と、今後のPLMの方向性を関係付けて述べることにある。ここまで述べてきた内容は「これからの企業が目指すべき方向」なのだが、念頭には「その方向とPLMのめざす方向は同じであること」「これからのPLMが新しくカバーすべきことはどんなことか」を置いていたつもりである。今回以降、PLMについて本格的に述べたいと思っており、まず「今までのPLM」を簡単におさらいする。次回以降「これからのPLM」を述べたい。

 今までのPLMとは、「製品の企画~開発・設計~生産準備~調達・生産~販売~保守というライフサイクルにわたる企業活動の中で、製品情報を一元的に管理・活用し、市場投入納期の短縮やオペレーションの効率化により、収益の最大化を目的とするコンセプトであり、情報戦略であり、ソリューション・しくみである」としてまず間違いはないだろう。しかし、そうあるべきだというコンセプトは分かるのだが、ライフサイクル全体の仕組みがPLMというのは無理がある。川上の次の工程である購買・生産・販売・サービスプロセスの最適化コンセプトや戦略はSCMの範囲であり、そのソリューションは基幹系ERPであって、PLMではない。しかし、日本の今後の“もの・ことづくり”が目指すべき「真のグローバル企業」、そのために「川上力強化」を図るための要件を考えると、従来の考えにとらわれない新しい期待(負わせるべき役割)がPLMにあるのではないかと思っている。それについては次回詳しく述べるが、今回は次の点だけ触れておきたい。

PLMが生まれた経緯、現実、実態

 PLMは、ビジネス視点ではPDM(製品データ管理)ベンダー(CAD開発ベンダー系と独立系が存在)の次世代のビジネスとして考えたもの、ともいえるのだが、ニーズ視点からは、航空機産業や自動車産業がグローバルな協業のための情報連携(PDMの機能を超えるBOM管理、構成管理、変更管理)を図る必要性から生まれたものといえる。いずれにしても、1990年代はPDMの時代であったが、2000年に入ってPLMへの進化の時代に入り、大企業を中心に、欧米製であれ日本製であれPLMのツールを導入して、設計BOM(Bill of Materials)や生産技術BOMの構築、変更管理に活用されている、というのが実態となっている。

 しかし課題も多く、その代表的なものとして下記を挙げることができる。

▼必要性はあるだろうが、投資・費用に対する効果が不明確(特に経営層にとって)
▼恩恵を受ける対象が分からない(担当者層にとって)
▼PLMとは何をやることかよく分からない(PLMの進化を考えている人にとって)
▼システムのオーナーが不明確(情報システムとしては極めて稀なケース)

 以上の他に、PLMのコンセプトや戦略はPLMツールに依存しすぎているきらいがある、と筆者は感じている。もっと本質的な目的や必要性から、これからのPLMのあるべき姿を述べていきたいと思っている。