「真のグローバル企業」としての要件とは

 “もの・ことづくり”ができる「真のグローバル」企業になるための要件を3つ挙げる。1つ目は、情報連携を“現在よりはるかに広く・深く”対応できるようにすること。2つ目は、市場の情報を迅速・的確に分析・活用対応できるようにすること。3つ目は、社内外の経験・知見・ノウハウ・知恵をコントロールしながら、必要に応じて、必要な範囲で共有・再活用できるようにすることである。

【情報連携を“現在よりはるかに広く・深く”対応できるようにすること】

 特に川上機能に必要なことだが、“はるかに広く”情報連携するとは、拠点間でやりとりする情報の幅を現在よりも格段に広げることである。しかも、それは必ずしも日本が発信源になることを意味しておらず、各拠点が自律的・自立的に情報連携を進めていけるようになることが望ましい。

 情報連携を“はるかに深く”する、とは「川上機能のローカル化」をグローバルに展開するにあたって、従来の「データ授受」にとどまらず、業務のプロセス、業務のやり方・考え方など「より本質的な情報の授受」を増やしていくことである。

 なぜ現在より“はるかに広く・深く”情報連携が必要になるのか。川上機能には下記に挙げる特徴や傾向的な課題があり、それらに対応するためである。

▼川上機能は、混沌とした多くのデータや情報を、目的とする仕様に合う情報に論理的に収れんさせ、実証していくという高度なプロセスである。それは自己の経験を核に、企業内外の多様な知識・知見などを複雑に参照・交換・交差させることから生まれる。その際、収れんした以外の情報は、ほとんどが再び使用されないというのが実態であるが、それも活用できるようにすべきである。

▼利用技術が高度になるにつれて、ますます専門・縦割りの分業組織化が進み、各要素間の仕様や技術の取り合い、擦り合わせなど、より本質的な業務内容の連携が必要になる。

▼縦割りが進むにつれ、俯瞰的・総合的に全体像を把握できる人材が育ちにくい状況となっているので、それを情報の連携(共有化)で補う必要がある。

▼アウトソースや海外移管が進むにつれ、設計の要素間、設計と試作・評価間、設計と生産準備間、生産準備と製造間など、担当する部門同士の物理的距離が離れ、意思疎通を図りにくくなっているので、情報連携で補う必要がある。

▼川上は創造性を発揮することを求められるため、必然的に「考え方の標準化」や「既成技術を使うこと」に抵抗を持つ傾向があり、NIH(Not Invented Here:自分が発明したもの以外は関係ないものとしたり、受け入れを拒否したりする姿勢)が残念ながら今でも生きている場合もある。しかし、お互いの情報連携で双方が有益になることが分かれば、一気に情報連携も拡大するものである。

【市場の情報を迅速・的確に分析・活用対応できるようにすること】