過去最高の約80万人の来場者を集めた北京モーターショー(AutoChina2012、2012年4月23日~5月2日)。会場には、多くの電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHVまたはPHEV)などの新エネルギー車が顔をそろえた。特に力を入れていたのが中国メーカーである。大手国有から民間企業までがコンセプト車やカットモデルを含め、多彩な車種を披露した(表1)。

表1●中国車メーカーが北京モーターショーに出展した主な新エネルギー車(日経BPクリーンテック研究所調べ)
メーカー名 EV PHV HEV
東風汽車 S30EV、E30、E30L   A60ISG
上海汽車 Roewe E50(2012年秋に発売か)   Roewe750hybrid
北京汽車 C70GB、E150REEV(レンジエクステンダ付き)    
第一汽車 M80EV B50PHEV(カットモデル)  
力帆汽車 Lifan620EV    
長城汽車 C20EV    
吉利汽車     GPEC(カットモデル)
安徽江淮汽車 iev-第二世代   8ReV
奇瑞汽車 M1 PEEV(レンジエクステンダ付き)、M1 EV(発売済み)    
比亜迪(BYD) e6(発売済み)    
BDNT(BYDと独ダイムラーの合弁会社) DENZA(コンセプト車)    
華晨汽車 H530 REEV(コンセプト車)    
広州汽車 E-linker(コンセプト車)  
* 航続距離延長装置。例えばエンジンで発電機を回して電力を供給する

 目立ったのは、走行距離を延ばすためのレンジエクステンダ(航続距離延長装置)を搭載したEVが登場したことだ。走行用モーターとは別に発電専用の小型エンジンなどを搭載し、EVの蓄電池の残量が少なくなった場合などに始動することで不足する電力を補う。コンセプトはPHVに極めて近い。

その1台である北京汽車のEV「E150REEV」は、蓄電池だけを使った充電1回あたりの走行距離は60km程度と短いが、レンジエクステンダを使うと400kmまで延びるという。奇端汽車も発売済みのEV「M1」をベースに、レンジエクステンダを搭載した「M1 PEEV」を展示した。

 今回、レンジエクステンダ付きEVが登場したのは、充電インフラの未整備が足かせとなってEVが思ったように売れないためだ。中国ではEV普及のモデル都市でさえ、公共の充電インフラはごく一部の地域にしか整っていない。EVの個人購買に対して中央・地方政府が補助金を支給しているが、いくら安くても購入をためらうのは無理もない。レンジエクステンダ付きなら、充電インフラが十分でない地域でもユーザーは“電池切れ”を心配せずに済む。

 北京モーターショーの開幕目前には、中国政府が新エネルギー車の産業政策を発表した。2015年までに生産・販売台数を50万台、2020年までに200万台にする。年間約1900万台(2011年)という中国の巨大な自動車市場はまだ拡大し続けているが、10年足らずでその約1割を新エネルギー車に置き換えるという野心的な目標である。