「小米」の特徴

 フィーチャフォンからスマホへの進化は、日本の携帯電話業界の勢力図を大きく塗り替えたのと同じように、中国でも大きな変化が起きた。その中にはアップル、サムソン、ノキアが代表する外国勢以外に、中国の携帯電話メーカーも多数存在する、家電系(Hisense、TCLなど)、IT系(Lenovoなど)、通信設備系(Huawei、ZTEなど)、そして、無名の山寨系(中国モノマネ工場)がある。小米は、それらと違うビジネスモデルで業界の勢力図を変えている、インターネット系のスマートフォンメーカーと言える。

 中国での関連報道、そして小米のWebサイトに登録して調べてみると、小米スマートフォンの特徴は、一言で言えばインターネットを最大限に活用したビジネスモデルである。具体的に説明する。

ユーザー参加型の開発

 小米は、MIUI(小米OSの名前)フォーラム(http://www.miui.com/)を開設。開発段階から一般の人、特にスマートフォン・フリークから、ほしい機能や改善したいところなどの意見を積極的に募集した。希望者が多い機能は採用され、修正意見に関しても内部で検証して採用する。さらに、普通は開発者が実施するソフトウエアのテスティングの一部に関しても、ユーザーから希望者を募集して実施する。このように、ユーザー参加型の開発、テスティングが行われた。

 小米は、MIUIフォーラムをベースにユーザーニーズの管理とデバッグ管理をオープンし、OSであるMIUIの改善を進めた。そのためMIUIは、安定版以外に、毎週金曜日に開発版を配布する。下記の図は、MIUIフォーラムの一部を示している。

図2 トップページの一部。緑のボタンでOSのダウンロードが始まる。ブルーのボタンはMIUIフォーラムへの加入を希望する際に押す。
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図3 フォーラム上の開発関連のトップページ。機能ごとに分類されている。
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図4 カメラ(中国語:相机)関連のバグリスト(BUGLIST)の一部
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 ユーザーが書き込んだカメラを使用するうえでの問題に対して、他のユーザーも同様な問題にあったときには、「私もあったことがある」のボタンを押すことが可能(図4の下の真ん中)。提案の数、バグ発見の数、MIUIフォーラムにアクセス時間などは、ユーザーの貢献度として、ポイントが付けられる(図4の左)。なお、ユーザーが書き込んだこのバグは、右上にある斜めの赤マークで示されたように既に確認されて、バグリストに反映されている。

 Android2.3.5を採用するMIUIは、このように、さまざまな改善と工夫が重なり、もっとも中国ユーザーに合うようなOSになっているという。

 正式発売の前、テスティング用の小米スマートフォンは、積極的にMIUIフォーラム活動に参加したフリークに限定して、低価格で販売された。実機による検証が行われると同時に、貢献したユーザーにとっては励みともなる。それを入手できるユーザーとしては、いち早く自分が関わったスマートフォンを使うのは、嬉しいことだろう。

販売も販促もインターネット

 小米は店頭の販売ではなく、インターネットによるオーダーメイド方式で販売している。“http://xiaomi.com”で、購入の申込を受けて、その情報から部品の購入と製造量を決めて、OMEの製造工場へオーダーを出すので、在庫を最小にすることが可能だ。ただ、パソコンであればモジュール化が相当に成熟しているので、部品を調達しやすいが、スマートフォンの場合は、まだそのレベルには達していない。部品を調達する時間はまだ長いそうだ。そういった意味では、小米のオーダー製造はまだ進行中で、期待されている在庫削減はまだ先の目標だ。

 販促にもインターネットが最大限に活用されている。開発の段階からスマートフォンのフリークを取り入れていたので、彼らが最初の購入者となる同時に、彼らによる口コミを通じて小米の人気は若者の間で広がった。また小米のポータルサイト、MIUIフォーラムや微博(中国版のTwitter)の活用で、小米の人気はさらに拡大した。特に小米の管理層は積極的に微博で発信することで、小米の話題を作り、人気が続いた。スマートフォンフリークをうまく取り入れることとインターネットのソーシャル機能により、小米の知名度は、短期間に全国的に知られた。