図1 小米スマートフォンの外観(日経エレクトロニクス提供)
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 昨年から中国において、話題を呼んでいるスマートフォンといえば、iPhone以外では間違いなく「小米」である。Tech-On!の記事(中国で大人気の“幻のスマホ”を入手)で既に紹介されているこのスマートフォンは、昨年10月に発売されてから、高性能(デュアルコア1.5GHz)と低価格(1999元、日本円で約25000円) がウリで、人気が続いている。他のスマートフォンとの機能、価格、ユーザー体験、品質の比較が注目されているが、私が興味をひいたのは、携帯電話機を作る伝統的なメーカーではない、従業員がたった数百人程度の小米が、どうやって高性能と低価格のスマートフォンを作って、全国的に販売できたかだ。なぜ、強敵が溢れるスマートフォン業界で有名になったのか、何かイノベーションがあったのだろうか。期待を込めて、考察してみた。

「小米」の由来

  小米は北京小米科技有限責任公司が販売するスマートフォンのブランドである。なぜ「米」という文字になったかというと、それはMobile Internetの頭文字であるMとIがあわさる「MI」の発音が、中国語の「米」の発音と同じだからそうだ。モバイルインターネットはIT業界の未来であり、モバイルインターネットに力を尽くすという意気込みが込められたようだ。日本では、あんまり見かけないが、雑穀の中の一種である小米は、中国のスーパーのお米コーナーではよく売っている。お米(中国語:大米)より小さいから、小米と呼ばれる。ご飯としての食感はよくないが、小米で作られるおかゆは美味しくて人気が高い。「大米」と比べて存在感は薄いが、独特の美味しさで人気を博し、強敵が多いスマホの世界でも、自分の強みで頑張る、との思いも込められているのではないかと考えている。また、「小」で名づける言葉は親しみ、可愛いというイメージもあり、若者の好感を頂きやすい。

 小米の創立者雷軍氏は、電子商取引サービス企業である卓越(既にアマゾン中国に買収された)の創業者であり、エンジェル投資家でもあり、業界で注目の的だ。雷軍氏は、グーグル中国、マイクロソフト中国、モトローラ中国などから、アップルのような世界トップクラス企業の夢を持つ優秀な人材を獲得し、2010年4月に、小米を創立、スマートフォンの開発に乗り出した。