中国は世界第2位の経済地域になり、世界経済の発展に大きな影響を与えるまでになった。しかし、この急速な経済成長の過程で、大きな社会的矛盾も発生している。貧富の差を含めて都市と農村の発展の格差が大きく、産業の付加価値は低落し、環境汚染の問題は日に日に大きな問題になっている。そこで、中国は「第12次5カ年計画(十二五)」の期間中(2011~2015年)に、産業発展のマクロ環境を改善しようと計画している。海外からハイレベルな人材が集まるようにしながら、自主的なイノベーションを強化して、新興産業の発展を促進し、外国投資誘致を成功させる、といった内容を含む。中国が第12次5カ年計画の目標を実現することができたなら、海峡両岸(中国と台湾)に変化が起こり、アジア地域の産業における競合の構図も変わっていくだろう。

 中国は、外部環境の厳しい変化にも直面している。韓国や台湾も、アジア市場での勝者を目指している。2010年に、海峡両岸の中国と台湾は「両岸経済協力枠組協定(ECFA)」に署名した。ECFAは2011年1月1日に発効され、その後の交渉も徐々に進んでいる。台湾がECFAに署名した目的は、経済貿易活動の正常化の促進である。ECFA締結により、台湾の経済活動のために中国の資源を得ることも可能になる。中国市場における公平な競争環境を整備するための交渉も、進展が期待されている。中国をはじめグローバル市場における台湾の産業の競争優位性を高めるためには、中国の産業政策の内容を分析する必要がある。台湾が経済関連の交渉を有利に進めるためにも、台湾の産業発展に有利な条件を作り出すためにも必要なことである。

「第12次5カ年計画」における産業政策

 中国がこの5年間に実施した産業政策の公開内容を整理すると、以下の四つの項目に分類できる。(I)特定産業の専門プロジェクト計画、(II)特定産業の発展の支持および指導意見、(III)産業の発展に関する指導意見、(IV)産業に関する中長期計画、の四つである。この内容を分析すると、以下の変更点があることが分かる。

(1)重点は新興産業へシフト、中長期計画で取り組む

 最近5年間に発表された産業特定項目の企画には、2006年に公表された「伝統中国医学革新開発計画(2006~2020年)」、2009年初めに公表された「紡績、設備製造、鋼鉄、船舶、自動車、軽工業、石油化学、電子情報、有色金属、物流、文化など11大産業の調整と振興計画」がある。いずれも既存の主力産業に着目している。

 2010年に国務院が「教育の加速及び戦略的な新興産業の決定の発展」を公布した後、戦略的新興産業と位置づける7大産業も徐々に計画・審査の段階に入った。なお、11大産業の振興計画の調整は、金融危機による輸出の衰退によるもので、2011年末に終わった。経済成長の減速の危機から制定された調整で、その内容は内需の刺激が中心だった。現在検討が進んでいる戦略的新興産業の振興計画は、すべて中長期計画である。こうした計画によって、中国は現在の産業構造および経済成長モデルの転換を目指している。

(2)指導意見を通して、現状の産業構成を改善

 指導意見の提出書類は、数量も多く、範囲も広く、中国の産業政策における重要な書類と見なされている。たとえ指導意見の内容の多くが原則的な内容であっても、中央からの指導意見は、下の部および地方政府に対して大きな影響力がある。第12次5カ年計画の時期に入ると、指導意見は「遅れている産能の淘汰」「企業合弁の組み換え」「中小企業/民営企業の発展」などの課題を特に重視するようになった。

(3)サービス分野では、物流業に引き続き高い関心

 既に公布されている産業調整振興計画と検討中の戦略的新興産業計画を比較すると、サービス業に関する政策は若干弱い。2007年と2008年前後に公布された二つの書類の「意見」によると、中国の政府筋が「発展している」と強調するサービス業は、「生産性サービス業」と「生活性サービス業」に分かれる。生産性サービス業では、物流業および金融業を政策の重点としている。現在支持している政策の深さ、広さを見ると、物流産業は中国で最も大きな支持を受けているサービス業の一つであるといえる。