蓄電池の使用量低減が課題

 今後の課題は、蓄電池の必要量をいかに下げるかである。今回設置した4000kWというNAS電池の規模は、再生可能エネルギーの導入量とほぼ同じ規模であり、かなり大きい。実系統で実験するので、安全を優先して大量に設置した。これからは、周波数の変動幅などに応じてどの程度の充放電量を確保すればよいかを詰め、2012年度から始まる前述の「(3)スケジュール運転」や「(4)最適な制御方法」などの検証と合わせて、総合的に蓄電池の使用量削減策を確立する。

 このうちスケジュール運転の検証では、まず気象データを用いて、日射量を予測して太陽光発電電力を計算し、発電出力カーブを作成する。その出力カーブと蓄電池の残存電気量から、発電および充放電の運転計画を立てる(図5)。当日は、そこからずれた部分だけを蓄電池で補正することで、電池の使用量を抑えられると見ている。

図5●スケジュール運転のイメージ図 (データ:沖縄電力)
図5●スケジュール運転のイメージ図 (データ:沖縄電力)

ディーゼル発電機を効率運転

 さらに狙っているのは、ディーゼル発電機の運転を効率化することだ。4000kWの太陽光発電設備があっても、天候が悪化して出力がゼロになることを想定し、現在はディーゼル発電機をホットスタンバイさせている。つまり、複数台のディーゼル発電機を低出力で運転し続けて、太陽光発電の出力低下に常に備えているのである。スケジュール化によって、例えば「今日は雲もなく日中の出力低下はない」ことが分かっていれば、ホットスタンバイしているディーゼル発電機を減らすことができる。逆に、事前に太陽光発電の出力が落ちることが分かっていれば、蓄電池を稼働させる運用に切り替えることで、やはりスタンバイ状態のディーゼル発電機を減らせる。

 加えて「(4)最適な制御方法」では、家庭や学校・商業施設に設置した太陽光発電設備や蓄電池と、6.6kV系統といった上の送電階層に設置した設備をどのように連係制御すると効率よく変動を平滑化できるのかを探っていく。系統側で変動分を全部受け持たず、一部は需要家のところにある設備で吸収してもらうことで、蓄電池の量を削減しようというわけだ(図6)。

図6●模擬の配電線路を用いた最適制御のイメージ図 (データ:沖縄電力)
図6●模擬の配電線路を用いた最適制御のイメージ図 (データ:沖縄電力)

 具体的には、学校・商業施設を模した150kW出力の太陽光発電設備と、家庭を模した4kW出力の太陽光発電設備25軒分から成る需要家の模擬回路を1ブロックとし、それを4ブロック設置して、太陽光発電を積極的に使ったり、スマートハウス化したものなどさまざまな負荷パターンを模擬的に作り出して効果を検証していく。

海外の離島向けにも展開を狙う

 沖縄電力は、今後2年間でこれらの検証を行って離島向けのマイクログリッドの技術を確立した上で、沖縄電力管内だけでなく、海外の離島にも展開したい意向だ。「宮古島で開発しているのはフルスペックのマイクログリッドだが、島々のニーズに合わせて必要な機能に絞り、蓄電池の搭載量も最適化して、展開していきたい」(同社研究開発部次長の上原真二氏)という。

 というのは、太陽光発電などの再生可能エネルギーに加えて蓄電池を搭載したマイクログリッドシステムはコスト高になるが、離島ではもともと電力コストが高いので、今後再生可能エネルギーのコストが下がっていくと、経済的なメリットが出やすいからである。実際、宮古島のケースでも、ディーゼル発電機に使う燃料代や燃料輸送費がかさむことから本島に比べて電力コストが1.7倍にもなっているという。このため、「宮古島レベルの数万kWレベルの系統規模の離島であれば、将来的に再生可能エネルギーと蓄電池を導入しても採算がとれる可能性が高い」(上原氏)と同社は期待している。

この記事は日本経済新聞電子版日経BPクリーンテック研究所のコラム「クリーンテック最前線」から転載したものです。