エルピーダメモリの倒産やパナソニック、ソニー、シャープ、NECなどの巨額赤字。エレクトロニクス業界は大企業といえども安泰ではありません。会社が倒産しなくとも、三洋電機のように大企業が買収されたり、事業部門が売却されることは珍しくなくなりました。

 会社や事業の生き残りが厳しいことに加えて、たとえ組織が存続しても、エンジニア個人が生き残ることがますます厳しくなっています。というのも、産業構造でさえも急激に変わってきているからです。

 市場が急成長しているクラウドデータセンター事業では、GoogleやFacebookといった、データセンター事業者がサーバーやストレージといったハードウエアの仕様を決めるようになりました。データセンター事業者は従来はサービスと、サービスを実現するためのソフトウエアの開発に特化していました。

 ところが、「ビッグデータ」と言われるように、インターネット上を行き交うデータが膨大になるにつれ、データセンターの性能や電力効率を上げるには、ソフトウエアだけでなく、ソフトからハードの全体の最適化が必要になってきているのです。

 データセンター事業者がCPUベンダやSSDベンダなど、半導体ベンダと直接取引をするようになりました。その結果、EMCやHP、Dellといったストレージシステムやサーバーシステムを提供してきたベンダが「中抜き」され、業界そのものが、厳しい状況に追い込まれつつあるのです。

 ビジネスモデルの転換により、エンジニアの仕事が減ってしまうケースもあります。最先端の微細加工技術を開発する企業は、日本ではフラッシュ・メモリの東芝(と倒産したDRAMのエルピーダメモリ)だけになりました。

 CPU、システムLSIやマイコンを製造する、ロジックLSIメーカーは最先端の微細加工技術を開発することをやめました。「ファブライト」「ファブレス」のように、製品の設計と販売に集中し、最先端品の製造はTSMCやGLOBALFOUNDRIESなど、海外の企業に委託するようになりました。その結果、日本国内では半導体のデバイス・プロセス技術者の仕事が急激に減ってしまいました。

 半導体の回路設計者も、うかうかしていられません。設計CAD技術の急速な進化、中国やベトナムなど新興国のエンジニアの急激なスキルアップにより、多くの仕事がコンピュータで代替されたり、新興国にアウトソースされてきています。デジタル回路の設計がその典型例でしょう。