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 マツダの次世代技術「SKYACTIV」をすべて採用した初めての車種であるSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)の「CX-5」は、発売から1カ月のうちに、当初の販売計画の8倍以上となる8008台を受注したと伝えられている。しかも、ディーゼルエンジン車が受注の約7割を占め、ガソリンと半々という同社の当初の予測を大きく超えた。

 エンジン、変速機、シャシー、車体のすべてにSKYACTIV技術を盛り込んだCX-5の試乗で、今回乗った車種は、ディーゼル仕様の4輪駆動車と、ガソリン仕様の前輪駆動車である。すべてを刷新したクルマということで、CX-5への期待は大きかった。そして、結論を先に言えば、マツダの狙いは成就したというのが総合的な印象だ。ややもすれば、ディーゼルエンジンだけが話題となりがちだが、クルマとして総合的に評価できる新車と言える。

 印象的だったのは、走行全域にわたる自然で滑らかな走行感覚である。加減速や操舵に対して、違和感なく、自然な動きで走っていく。従って、これといった強い印象の残りにくい運転感覚ではある。だが、それだからこそ、長時間運転しても疲れにくく、快適に移動できるクルマだと言える。

 例えば、車体のピッチングに対して、SKY ACTIVではアンチダイブやアンチスカットなどのサスペンションジオメトリを採用していると、以前の技術発表で説明を受けていたが、確かにCX-5では車体の余計な動きがなく、安定感がある。

 また、操舵に対しても余計なロールやヨー変化を起こさないようにしているため、ステアリングを切り込んだ通りに曲がり始める素直な操舵感覚が得られる。あるいは、アクセルペダルの踏み込みに対して、急激に出力を出し過ぎないようにしているので、加速不足や加速し過ぎといったことに余計な神経を使わずに済む。こうした走行中のクルマの動きがすべて滑らかに行われ、素性のいいクルマという印象を受けた。

 ただし、すべてを刷新したためか、これからの熟成に期待したい点もある。例えばブレーキは、アクセルと違ってペダルを踏み込み始めたところから、制動力がきちんと立ち上がって欲しいのだが、CX-5ではペダルを踏み込むに従ってブレーキが効き出すようにしているため、ペダル踏み始めに「止まらないのでは?」という不安を感じる。特に車体が重いディーゼルの4輪駆動車でその傾向が強まる。

 あるいは、電動パワーステアリングのモータ補助力が、車両重量の違いに合わせて細かくチューニングされていないためであろう。車体の重いディーゼルの4輪駆動車では、操舵の過程で前輪の舵角が増えることによる操舵力の変化がやや大きすぎるようだ。ばねとスタビライザは、ディーゼル車とガソリン車で仕様を変えているが、ダンパの減衰力は同じと聞いたのだが、それによるのだろうか、ディーゼルの4輪駆動車では路面の小さなうねりの影響による上下動が収まりにくく、車酔いしそうになる。特に後席の快適性が損なわれているように感じた。

 こうした点は、今後、クルマの改良が進むにつれて改善されるはずであって、クルマの基本的な課題ではないから、さらにきめ細かく仕上げられていくことに期待したい。

 さて、多くの人が気にしているであろう、ディーゼルエンジンについて触れよう。SKY ACTIV-Dと名付けられたクリーンディーゼルエンジンは、さすがに最新のエンジンらしく、振動・騒音を抑えたうえで、レッドゾーン付近に至るまで実に滑らかに、手ごたえの確かなパワーを発生し続けた。ターボチャージャの過給によるターボラグもなく、気持ちのいい加速を味わえるエンジンだ。

 また、アイドリングストップの「i-stop」を、ガソリンエンジンと同様に装備するので、もともと抑えられた停車中の振動や騒音を、完璧になくすことになる。再始動もすばやく的確なので、何ら不安はない。ディーゼルエンジン車では、高速道路なら満タンで1200kmほど走れるだろうということであり、長距離を移動する機会の多い人にはさらに魅力だ。

 こうしてディーゼルエンジンばかり注目が集まりがちだが、ガソリンエンジンの方もSKY ACTIV-G本来の、4-2-1排気システムが採用され、低速トルクが高まって本領が発揮されている。ディーゼルエンジンに比べ最大トルクはおよそ半分だが、約100kg軽いというエンジン自体の軽さと、今回の試乗車が前輪駆動車だったこともあって、1440kgの車両重量のCX-5を、このガソリンエンジンは軽快に走らせた。

 JC08モード燃費で比較すると、ガソリンエンジンの前輪駆動車の20Sグレードは16.0km/L、ディーゼルエンジンの4輪駆動車のXDグレードで18.6km/Lである。駆動方式を含め、仕様は全く異なるが、車両重量で170kgの差があり、希望小売価格で59万円の差になる。ガソリンもディーゼルもどちらもそれぞれに良さがあるので、自分の用途をよく検討してグレードを選ぶといいだろう。

 補足として、スウェーデンVolvo社がすでに採用している低速走行時の自動ブレーキ機構「シティセーフティ」と同様の運転支援機能が、今回試乗をした20SとXDにメーカーオプション設定されている。リア・ビークル・モニタリングシステムとクルーズコントロールとのセット注文で価格は7万8750円だ。Volvoのシティセーフティの機能に加え、AT(自動変速機)誤発進抑制制御がマツダ独自に追加されている。近赤外センサを使うことで、雨天、夜間、逆行などでも機能する装備となっている。万一の備えとして、頼りになる安全装備といえる。