今回紹介する書籍
題名:郭台銘管理日誌
作者:徐明天
出版社:浙江大学出版社
発行日:2011年4月

 今週も、シャープへの出資で注目を集める台湾企業「鴻海(ホンハイ)」のCEOである郭台銘の語録『郭台銘管理日誌』を紹介する。

 今週取り上げるのは「人材」「文化」「実行力」「学習」「リーダーシップ」「責任」に関する郭台銘の発言だ。

 科学技術に関しては比較的穏健な発言が多かった郭台銘だが、「人材」「学習」に関してはかなりはっきりした主張をしている。

 「あなたがもし自らを有能な人材だと思うなら、自分で立ち上がれ。伯楽は忙しくて黙っていては気づいてくれないのだから」

 企業にとって最も大事なのは人材を見つけ出し、育て、そしてその人に自社に留まってもらうことだとも述べている。郭台銘にとっても人材の発見と確保は難事業らしい。その中でも優秀な人材の集め方に関しては以下のように述べている。

 「いい鳥は住む木を選ぶ」

 つまり、企業側が良くならなければいい人は来ない。そして「いい鳥」が木を選ぶ判断記述は以下の通りだ。「信用、チャンス、教育、福利厚生、待遇」。つまり、待遇だけよくしても意味がないのだ。経営者にとって示唆するところの大きい発言ではないだろうか。では、経営者側が努力するだけでいいのかといえばもちろんそうではない。

 「学ばない人間は淘汰される」
 「成長している企業にとって、内部の競争システムと技術の向上は必須であり、これがなければその会社は生き残ることができない」
 「社会というのはピラミッドのようなものだ。毎日進歩を続けていれば、必ず頂上に行くことができる」

 このように内部の職員にも多大な努力を求めている。このように経営者側と職員側がともにある意味けん制しあい伸びていく、というのが郭台銘の企業成長モデルなのだろう。では、そのような企業にはどのような企業文化が求められ、育つのか。本書では文化に関する郭台銘の発言も取り上げている。

 「文化というのは不死鳥のようなものだ(いい文化であれ悪い文化であれすぐにできるものではないし、すぐになくなるものでもない)」
 「企業文化とは企業のブランドである」

 では、鴻海の企業文化について郭台銘自身はどのように述べているのか。本書では2006年の彼の発言から以下のように紹介している。

  1. 勤勉である
  2. 責任感がある
  3. 力を合わせ、リソースを分かち合う
  4. 貢献に見合ったリターンがある

 大変具体的でわかりやすい企業風土だと言える。このような率直な姿勢が企業の活力を生んでいるのだろうか。

 最後に私が最も「なるほど」と思った発言を「リーダーシップ」の章から紹介したい。

 「部下に50キロ歩かせるなら、自分は50キロ走れるようにしなければならない。」

 このように先頭に立ち、企業を引っ張ってきたからこそ、鴻海をたった10人程度の工場から外国の企業を買収できるような巨大企業になしえたのだろう。この彼がシャープの経営に関わるようになり、日本の産業界にもなにがしかの影響を与えるようになるのだろうか。