先ほどのような口コミを聞いた消費者の多くはこう思う――「そうか中国メーカーのテレビを買っても壊れないのか」「ならば買ってみるか」。AVマニアがこだわる細かい画質の差は気にせず、現在ラインアップされている製品を見て、「まともに映っているからOK」と中国メーカーのテレビを買っていく人は多い。中国の多くのテレビには録画機能はないが、USB端子は用意されている。動画共有サイトでドラマや映画やアニメを見て、人によっては外付けハードディスクにコピーした後、それをテレビに繋いで見るためだ。

 中国人にとってテレビは、メンツを体現する家電でもある。玄関を開けたらすぐに居間があり、居間には大きなテレビがある。「大きいモニターなら来客を迎えられる。小さいと、生活に困窮しているようで恥ずかしい」と思うわけだ。中国メーカーのロゴのあるテレビはメンツ的にどうか。これについては大丈夫なのである。日本のブランドの方が良いとは、皆が思っている。しかし、最もメンツを気にするテレビではあるが、必ずしも日本メーカーである必要性は見られない。

 公衆の場で携えて使うノートパソコンも携帯電話機(スマートフォンを含む)もメンツが絡む。だからApple社の製品が最も人気だし、またソニー、Nokia、BlackBerry、Dell、HPの各製品の人気も安定している。「日本メーカーは人気か」というと、中国に進出したからといって人気であるようには感じられない。値段が高すぎる上に、人気の理由となる付加価値・付加機能が中国人消費者にまるでマッチしていないことがある。上海や北京のパソコン市場や携帯電話市場といった“局地”でしか売られていないから「認知もほとんどされず」、「売れないから口コミでメーカーブランド・製品ブランドが伝わらず、転じてメンツにもならない」というネガティブ・スパイラルが発生する。

 検索サイト最大手の百度が提供する「百度版Googleトレンド」こと「百度指数」は、Tech-On!のAsia Chellengeサイトの読者には、ぜひとも覚えておいてほしいネットサービスである。これで企業名や製品名を検索すると、どれだけ検索されているかが数字とグラフではっきりと表示される。中国で、1に販売拠点を増やし、2に魅力的な製品を出し、3にPRをまめにしているメーカーは、検索数が多い。

百度指数
百度指数でソニーを検索

 「値段的にも性能的にも良い物が出れば売れる」のは日本を含む先進国の話で、途上国は評価される以前に“モノが売られていない段階”だ。多くの注目を浴びるためにも、日系メーカーには北京や上海への展開で満足せず、オンライン・ショッピングサイトに展開して満足せず、中国全土でブランド名が見られるように頑張ってほしい所存である。

電脳街にソニーの代理店1
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電脳街にソニーの代理店2
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