経済産業省は2012年3月30日から、平成23年度第三次補正予算による「定置用リチウムイオン蓄電池導入促進対策事業費補助金」に関する一般購入者の申請(予約申請)を開始しました。事業期間は平成25年度(2013年度)末、もしくは交付額が予算の210億円に達するまでとなります。

 補助は個人と法人での申請が可能であり、補助率は1/3となります。どちらも容量1kWh以上の蓄電システムが対象で、個人向けは最高100万円まで補助してくれます。一方、法人向けは1.0kWh以上で10kWh未満は蓄電システムのみが補助対象となりますが、10kWh以上の蓄電システムの場合は、設置工事費と蓄電システムに付随する筐体(キュービクル)や表示装置などの付帯設備費まで補助対象となります。法人向けでは最高1億円まで補助してくれるそうです。

 補助金の申請や交付などの業務は、環境共創イニシアチブ(SII)が担当しています。補助対象となるのは、SIIの認証を受けた機器のみとなります。ただし、現在のところ対象機器は3社7製品で、しかも蓄電容量は最大で3.2kWhのものしかありません。SIIは今後も審査を続けるため、対象機器は増える予定ですが、大型のシステムを導入したい企業などの法人はしばらく待つ必要がありそうです。

 現在、認証を受けているのは、ソニーとパナソニック、エリーパワーの3社の製品になります。具体的には、ソニーは容量2.2kWhで定格出力1000Wの「ESSP-2000L」の1製品。パナソニックはそれらが1.6kWhで700Wの「LJ-SA16A5K」(50Hz仕様)と「LJ-SA16A6K」(60Hz仕様)の他、容量が2倍ある3.2kWhで700W「LJ-SA32A5K」(50Hz仕様)と「LJ-SA32A6K」(60Hz仕様)の4製品。エリーパワーは2.45kWhで1000Wの「PPS-11」と「PPS-20」(LANによる外部接続機能付き)の2製品です。

 このうち、パナソニックのみが希望小売価格を明らかにしており、1.6kWh品が132万円(税抜き)で、3.2kWh品が160万円(同)となります。そのため、1.6kWh品であれば、約44万円の補助金を利用して約88万円(税抜き)、3.2kWh品であれば、約53万円の補助金がついて約107万円(同)で購入できることになります。100万円を切る価格であれば今後、新築住宅などへの導入の可能性も十分に出てきそうです。

 予算額の210億円をすべて使った場合、導入された蓄電システムの総容量はどのくらいになるのでしょうか。これは試算ですが、1システム当たり約50万円の補助金が出る3kWh程度の蓄電システムで予算額を使い切ると想定すると、12万6000kWh(126MWh)分の蓄電システムが導入されることになります。それでも日本全体のピーク電力を抑制する効果はわずかです。仮に、蓄電システムをすべて東京電力の管轄内で利用するとし、夏場のピーク電力(5500万kW程度)の際に蓄電システムを3時間ですべて放電する使い方をしても、東京電力のピーク電力を約0.06%しか引き下げることができません。効果はまだまだ小さいですが、日本で定置用蓄電池市場が始動しつつあることは間違いなさそうです。