スペインのバルセロナで開催中の展示会「Mobile World Congress」では、例年と同様、各社がモバイル関連のさまざまな機器や部品の新製品を発表しています(Tech-On!のMobile World Congress報道特設サイト)。数ある発表の中で筆者が注目しているのが、スマートフォンの低消費電力化につながる技術です。

 例えばマクロミルが2011年8月末にインターネットで実施した調査では、スマートフォンの所有者の約64%が「バッテリーの持ちが悪い」と回答したそうです(PDF形式の発表資料)。筆者もそうですが、「頻繁に使っていると1日は持たない」という人が多いのではないでしょうか。予備の電池を持つという手はありますが、本体に内蔵する電池だけでストレスなく使えるのが理想的です。

 「従来型の携帯電話機と比べて、スマートフォンは消費電力のダイナミック・レンジが格段に大きくなった」。スマートフォン向けの半導体を手掛ける、あるメーカーで聞いた言葉です。スマートフォンには、画面も無線LANもオフにした待ち受け状態もあれば、3Dグラフィックスを駆使した高精細なゲームを動かす状態もあります。下限は従来の携帯電話機と変わらないのですが、上限がどんどん高くなっているのです。

 スマートフォンの画面は大判かつ高精細になり、プロセサの動作周波数向上やコア数の増加も進みました。最新のハイエンドの機種は、ディスプレイが4.5~4.7型で1280×720画素、プロセサはCPUが2~4コアで最大動作周波数が1.5GHz前後といったスペックになっています。さらに、LTEやモバイルWiMAXなどの、複雑な信号処理を伴う次世代移動通信方式の採用が始まっています。端末が対応しなければならない周波数帯も増える方向です。消費電力を増加させる要因ばかりです。これまでも端末メーカーや部品メーカー各社は低消費電力化に取り組んできましたが、今後はさらに重要になりそうです。

 残念ながら、スマートフォン全体の消費電力を1/2にできるといった抜本的な変化をもたらす単一の技術は見当たりません。部品の細部のレベルからシステム全体のレベルまでの、さまざまなレベルで低消費電力技術を盛り込む必要があります。

 そのときにメーカー間の差として表れてきそうなのが、どれだけユーザーの利用形態に合わせられるかではないかと感じています。スマートフォンを単なる電話機として使うユーザーはまれでしょう。スマートフォンはデータ通信端末やゲーム機、Web閲覧端末といった複数の顔を持っています。「連続待受時間」や「連続通話時間」といった指標は、もはやユーザーの使い方にはそぐわないものになりました。「どのように使ったときに、どの部品がどれだけの電力を消費するのか」を時間軸や部品軸で細かく分析し、それに基づいて細部まで低消費電力化技術を盛り込む。それが、端末メーカーや部品メーカーの競争力につながりそうです。

 日経エレクトロニクス誌では、近いうちにスマートフォンの電池持ちを良くするための最新技術について記事をまとめる予定です。プロセサやディスプレイ、無線通信部などでどのように低電力化が進むのか、そして2次電池はどのように進化するのかなどを注視していきたいと思います。