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酸化物半導体の基本特許を出願して、さまざまなことを体験しました

丸山 正明=技術ジャーナリスト
2012/02/22 09:00
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東京工業大学フロンティア研究機構兼応用セラミックス研究所の細野秀雄教授
東京工業大学フロンティア研究機構兼応用セラミックス研究所の細野秀雄教授

 東京工業大学フロンティア研究機構教授の細野秀雄氏は鉄系の超伝導物質を発見するなど、材料科学の分野で独創的な研究成果を次々と上げている研究者として有名な人物だ。その細野教授が「大学教員にとっての知財の効用と苦悩:個人的体験から」という、刺激的なタイトルの特別講演に登場した。

 今回の特別講演は、2012年1月23日に東京都港区台場のホテル東京日航で開催された「国際知的財産活用フォーラム2012」(主催は工業所有権情報・研修館)で話されたものだ。大学教員の立場から独創的な研究成果を特許出願したことを契機に体験したさまざなな“事件”について、独特の飾らない話ぶりの“細野節”で講演した。

 この講演のハイライト部分の一つは、平成23年(2011年)7月20日に科学技術振興機構(JST)と東京工業大学が共同でプレス発表した「高性能の薄膜トランジスターに関する特許のライセンス契約をサムスン電子と締結した技術移転」による体験談だった。この時に発表された、高性能の薄膜トランジスターに関する特許は、細野教授の研究成果を基に特許出願したものである。科学技術振興機構と東工大は「日本の基礎研究成果が世界各国のディスプレィー業界の事業化推進に大きく貢献する」という趣旨を伝えたものだった。

 しかし、新聞などの報道記事の見出し程度しか見ない“半可通”の読者などからは「日本の大学の研究成果をライバルの韓国企業に売るとは何事か」という反応があり、細野教授の耳にも入ることがあった。「大学教員からの“苦言”という形の反響もあった」という。

 このプレス発表時の記者会見の際に、細野教授は「使われてこそ材料との信条から、国内国外の企業に分け隔てなくライセンスしたいという考えを当初から持っていました」と伝え、この特許のパテントプールは「通常実施権を束ねたものである」と説明した。しかし、こうした事実関係が一般の方などにはあまり伝わらず、「非難をされることもあった」と、細野教授は語った。

 実際に、科学技術振興機構が韓国のサムソン電子に実施権をライセンスした、酸化物半導体TFT(薄膜トランジスタ)関連のパテントプールは、2012年1月には国内の大手電気メーカーにもライセンスされ、国内外の企業に分け隔てなくライセンスするという方針が実行されている。

 現在、細野教授は総合科学技術会議が選んだ最先端研究開発支援プログラム(略称はFIRST)の中心研究者の一人として、また文部科学省の元素戦略プロジェクトの代表研究者の一人としてなど、さまざまな研究開発に邁進し、多忙な日々を送っている。その細野教授に、大学の基盤的な研究成果を特許などの知的財産にすることの意義について聞いた。

 東工大の細野教授が特別講演に登壇した「国際知的財産活用フォーラム2012」は、特許などの知的財産の戦略立案や活用などを考えたり、実践している知的財産の専門家が主に参加するシンポジウムである(2011年までは、同フォーラムは「国際特許流通セミナー」という名称で長年開催されてきた)。

 2011年までに開催された国際特許流通セミナーでは、大学教員が研究成果を特許出願した経緯などを話すことは当然あった。しかし今回、細野教授が特別講演で話したような、産業界に大きな影響を与える可能性がある、基本特許の技術移転のライセンス契約に関する生々しい話はほとんどなかったといえる。

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