パナソニック7800億円、ソニー2200億円、シャープ2900億円、NEC1000億円、エルピーダメモリも1000億円超とエレクトロニクス・メーカーが巨額な赤字に苦しんでいます。苦境の原因は東日本大震災や円高だけではないでしょう。震災以前から、日本のエレクトロニクス・メーカーはスマートフォンや半導体、液晶パネルなどの市場でSamsungやApple等の海外勢に苦戦を強いられています。

 エンジニアの皆さんの中には、厳しい事業環境で大変な苦労をされていたり、自分の会社や事業は大丈夫だろうかと、心配をされている方が多いのではないでしょうか。日本の電機メーカーの競争力の話は別の機会にして、ここではエンジニアご自身について考えてみます。

 エンジニアの雇用を考える上で大事なのは、そもそも、エレクトロニクス業界は栄枯盛衰が激しいこと。成長をするのが速い代わりに、衰退も速いのです。例えば、デジタル機器の記憶装置は、磁気テープ、光ディスク、磁気ディスク、フラッシュ・メモリと次々に新しい製品に置き換えられてきました。フラッシュ・メモリにしても、現在の市況は比較的好調ですが、微細化・大容量化の限界がささやかれています。

 もはや、エンジニアが大変な苦労をして一つの技術の専門家になったとしても、大学を卒業してから定年までの30年以上にわたり、自分が専門とする製品が存続することは難しい。現在の日本のように、自社が世界的な競争で優位に立っていたとしても、市場が消滅する可能性さえもあるのです。

 そんな、アップダウンが激しいエレクトロニクスの世界では、会社が生き残ることも大変ですが、エンジニアが生き残ることも大変です。以前の日本の企業でしたら、定年まで会社で勤め上げ、場合によっては定年後も関連の会社に移る、といった終身雇用の勤務が可能でした。

 ところが、携帯電話やシステムLSI、家電などの事業を見ればわかるように、事業の採算性が厳しくなると、ソニーやパナソニックといった大企業であっても、事業を抱えきることが難しくなります。

 不採算事業は他の会社と統合されたり、切り売りされることが、日本の会社でも頻繁に行われるようになりました。会社自身が生き残るために必死なのです。