IT(情報技術)を駆使して、エネルギー、下水道、交通といった社会インフラを効率的に整備・運用するスマートシティ化の試みが全世界に拡大している。日経BPクリーンテック研究所が全世界のスマートシティ・プロジェクトをリストアップしたところ、世界35カ国にわたり総数は400に達したことが分かった(図1)。

図1●スマートシティ400プロジェクトの世界分布。国家戦略としてエコシティを推進している中国が165カ所で最も多く、続いて米国・カナダの北米の87カ所、欧州の72カ所と続く
(出所:『世界スマートシティ総覧2012』、日経BPクリーンテック研究所)
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 400のスマートシティ・プロジェクトを国・地域別に分類すると、新興国については中国を筆頭に237プロジェクト、先進国は米国を中心に163となった。新興国の方がよりスマートシティ化が盛んである。

 新興国、先進国を問わず、各国がスマートシティに注目しているのは、人口増加や高齢化、都市化などに伴う多くの課題をまとめて解決できる有力な手段だと見ているからだ。特に、住民の生活の質を向上させながらも二酸化炭素や廃棄物の排出量を減らし、持続的な成長の原動力となることを期待している。

 この点は共通しているのだが、新興国と先進国では「悩み」が異なるので、当然ながらスマートシティ化する際の考え方も異なってくる。

 新興国では、人口増加に伴う都市への人口集中が大きな課題になっている。これを、環境負荷の低い新しい都市づくりによって解決しようという機運が高まっている。現時点で最もスマートシティへの取り組みが目立つのは中国だが、インドでも今後の都市計画にスマートシティ化を盛り込もうとしている。これが次に他のアジア地域に広がり、将来はアフリカ諸国にも波及すると見られる。

 一方の先進国では、地球温暖化に対応するための低炭素社会への移行、少子高齢化に伴う高齢者や健康対策などの観点を盛り込んだスマートシティ・プロジェクトが数多く始まっている。また、先進国にはスマートシティに注力するもう一つの目的がある。新興国が都市開発を行うとき、マスタープランの段階から参画することで、各種の技術や製品、運用ノウハウなどを盛り込んだスマートシティのパッケージを輸出することである。