2010年に実施した「iTiD開発力調査」の結果を紹介する本連載では、これまで日本全体の平均値にスコープを当てて各種数値データを交えながら日本の製造業の実態を解説してきた。いよいよ最終回となる今回は、少しブレークダウンして業界別の結果をランキング形式で紹介していきたい。ランキングは、2010年の開発力調査に参加した企業80社、約120事業体を業界別に分類し、業界あたりの企業数が比較的多い自動車業界、自動車部品業界、事務機器業界など6業界を対象とした。参加数が十分ではなかった医療機器や家電業界、造船業界などは対象外とした。従って、今回のランキングは対象業界の中での順位であるということをご理解いただきたい。

開発力は自動車業界がリード

図1

 まずはiTiD INDEXの総合評価のランキングを見てみよう(図1)。製品開発プロセスの実行度、定義度およびITシステムの活用度の全設問の平均点で表わされる開発力は自動車業界がトップとなった。2007年の前回調査で1位だった自動車部品業界は2位にランクダウンした。事務機器業界は3位を維持し、4位以下の順位にも変動はなかった。上位の入れ替わりは自動車業界の評点が伸びたことによるもので、他業界の開発力が落ち込んだということではない。

 もう少し詳細な結果を見てみると、自動車業界が全領域に渡って他の業界をリードしており、特に商品企画、詳細設計、プロジェクト管理の領域で差をつけていることがわかる(図2)。工作機械業界の詳細設計領域については建機・農機業界を除く他の業界と異なる傾向が見られる。この領域の設問内容を鑑みると、工作機械業界ではいまだに実物に頼った製品評価をしており、シミュレーションなどを活用した事前評価の技術が進んでいない可能性があることを示している。他の業界と比較して小ロット生産が多いということを考慮しても、改善の余地はあると考えられる。

 そしてもっとも評点が低いのは建機・農機業界である。実際には評点は若干伸びてはいるものの、2007年の前回調査に続いて6業界の中ではワースト1位という結果になった。ここ10年ほどで中国企業があっという間に追いついてきたのは建設機械技術が成熟しつつあるからだと考える向きもあるが、もしそうであれば日本の建機業界として差別化を図るポイントとなるはずの商品企画や技術開発の評点が他の業界と比べて目立って低いというのは気になるところだ。

図2
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