2. 日台メーカーが中国医療クラウドに参入する上での優位性

 中国の医療政策の今後を考えると、さらに具体的な実施計画と産業標準が必要である。医療データの情報化や病院情報のシステム化のペースに合わせて、政府は計画を途切れることなく進めるだろう。民営病院に対する規制緩和なども予想され、将来は医療分野で極めて大きな情報化ニーズが生じると予測される。

 2010年に台湾と中国間で交わされたECFA(両岸経済協力枠組協定)の中でも、医療と情報サービス産業は「アーリー・ハーベスト(関税の早期引き下げ実施項目)」にリストアップされている。台湾企業はこれまで内需向けに培ってきた医療サービスや情報サービスにおける強みを、中国市場への参入に生かすことができる。また、他の中国国外メーカーよりも、地元企業や政府と協力関係を醸成する上でも優位にある。

図3 ポストECFA時代の産業の対中投資における影響分析
出所:工業技術研究院IEK(2011年6月)
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 さらに、台湾は国民健康データバンクを創設し、既に十数年もの経験と膨大な国民健康疾病データバンクを持っている。これらの経験とデータが、中国の疾病予測や国民健康管理データベースの構築に協力する上でも役立つと考えられる。先日したように、中国の都市部と農村部では医療資源が均等に分配されておらず、問題になっている。また、農村部の医療サービス資源不足も深刻である。しかし、クラウド技術に遠隔医療情報診断などの方法を組み合わせることで、このような問題を解決できる可能性がある。

 日本企業はこれまで医療システム分野において、患者の病歴データ管理と医療情報の相互運用共有プラットフォームの実績を積み重ねている。遠隔医療応用サービスの開発でも先行しており、中国が推進している県または省単位の医療情報交換センター・プラットフォームや、薬品の管理・調達システムへの対応、および都市部・農村部の医療サービスの品質向上への取り組みにも活用できる豊富な経験を持つ。

 従ってECFA締結を機に、日本と台湾の企業は,日台の個人健康情報、医療情報管理プラットフォーム、および遠隔医療技術の優位性を生かす形で中国市場に参入できる。

日台提携による参入戦略

 中国医療情報システムの商機の多くは、政府と一部の民営医療機関にある。中国現地のIT企業はハードウエアの供給では優位な地位にあるが、医療サービス関係の健康データの整備や情報交換システムの構築、運営においては経験不足である。日本企業と台湾企業にとっては、健康情報データバンクと医療情報管理プラットフォームの統合などの分野で、中国市場に参入できるチャンスであると考えられる。以降では、日本企業と台湾企業が短期間に提携して中国の医療クラウドの商機に切り込むための戦略を提案する。