それでは、同社の内陸の生産拠点における待遇はどのようなものなのだろうか。2011年からAppleのタブレットPC「iPad」の生産を始めた四川省成都工場が、四川省のポータルサイト「列表網」の求人コーナーで10月末にワーカーを募集していた。少し長くなるが、日本との違いが際立って興味深いものもあるので、引用してみることにする。
年齢 | 16歳半~35歳 |
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応募条件 | フォックスコンで働いた経験がないこと/入れ墨・タトゥー禁止/大きな傷跡がないこと |
給与 | 月収2500元以上可能(基本給1350~1650元+手当130元+残業代350元以上・平均1200元+洗濯補助30元+生産ボーナス・最高200元。その他不定期に福利厚生支給) |
賞与 | 年度末に月給1カ月分+ボーナス支給(通常2~3カ月分) |
手当て・1 | 春節(旧正月)手当て100元(会社から)/300元(労働組合から) |
手当て・2 | 有名スーパーの商品券100元(隔月支給、年600元) |
手当て・3 | トイレットペーパー10ロール(隔月支給。年60ロール) |
手当て・4 | 誕生日に100元のケーキ引換券支給 |
手当て・5 | 祝祭日に祝祭日手当て支給(元旦、春節、メーデー、端午節、中秋節、国慶節など) |
保険 | 社会保険・公積金(住宅購入積立金)、これ以外に民間会社の医療保険を支給、社員本人及び扶養家族の医療費は、この医療保険を利用して事後請求 |
子女手当て | 子女の託児費や教育にかかわる雑費は国の規定に従い支給 |
食事 | 勤務時間中は食事を無料提供。残業時は残業用の食事を無料提供 |
レクリエーション | 年1回社員旅行、または同等の旅行代金支給 |
意外に充実しているなという印象をもたれる向きもあるのではないだろうか。
手当ての中に、トイレットペーパーがあるのを見てクスリと笑われた方もいるのではないかと思う。上海のオフィス系の企業の中にも、今でもトイレットペーパーやティッシュペーパーを支給しているところは多いようだ。私事で恐縮だが古くは1980年代末、筆者が山西省の太原という町の大学に留学していた際にも、留学生事務局からトイレットペーパーが確か毎月2ロール支給された。中国語の求人票ではこのトイレットペーパーやティッシュのことを「福利紙」と表記する。トイレットペーパーは、中国では伝統的に福利厚生を代表する支給品なのだ。
それにしても、フォックスコンはこのトイレットペーパーだけで年間120万人×60ロール=7200万ロールを支給する計算だ。ちなみに、小売り世界第3位の英TESCO社が上海の店舗で販売しているプライベートブランドのトイレットペーパーは、10ロールで20.6元。仮にこれを支給したなら、約1億5000万元(約18億5000万円)という金額になる。巨大EMSの規模を表すエピソードの一つだと言えるだろう。