2007年2月、MIT Assistant Professor(当時)のMarin Soljacic氏の研究室の様子
2007年2月、MIT Assistant Professor(当時)のMarin Soljacic氏の研究室の様子
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疑問3:共鳴からエネルギーを取り出せるか

 3番めの疑問は、磁界共鳴方式のワイヤレス給電で、負荷がある場合に高い共鳴(あるいは高いQ値)を保てるのか、というもの。今でも技術者などから出される疑問です。

 Soljacic氏への初めての取材時、つまりMITが実験で示す前の段階では、コイルなどで構成した理論上のシステムには負荷がありませんでした。理想的な共鳴状態に負荷を加えた場合に、共鳴の維持やエネルギーの取り出しが可能かどうかは、MITに行くまで、最大の疑問の一つでした。共鳴方式のワイヤレス給電システムと連成振り子の類似性には取材前から気が付いており、どうすれば共鳴状態を壊さずに片方の振り子からエネルギーを取り出せるかイメージが湧かなかったからです。例えば、共鳴状態にある振り子の一つに手で触れば、通常は振り子は止まってしまいます。この疑問をSoljacic氏に聞いてみました。

Soljacic氏 いい質問だが、そこは我々のコア技術でもある。今言えるのは、負荷がある場合は、当然、システムのパラメータが変わってくるため、それにアクティブに対応する必要がある。また、二つのコイル間でエネルギーが行き来することも考慮し、一方のコイルからもう一方のコイルへと送られたエネルギーを最適のタイミングで収穫していく必要もある。我々はそれらを実現する技術を既に開発し、実証実験を始めている。(取材が)もう2~3カ月後であれば、見せてあげることができたかもしれない。

 質問に必ずしも正対しない答えでしたが、当時はその課題を彼らが認識していることに対して、逆に共鳴方式のワイヤレス給電は嘘ではないと感じました。そして実際にSoljacic氏は取材から約3カ月半後、学術誌「Science」への発表という形で実際のシステムでの60Wの電球を点灯させた論文を公開しました(関連記事)。

 Soljacic氏に聞いた質問と興味深い回答は他にもありましたが、今回もこれ以上は長すぎるということで、次のチャンスがあればその際に紹介しようと思います。