アイリスオーヤマ角田I.T.P.のショールームで
アイリスオーヤマ角田I.T.P.のショールームで
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 一昨年(2009年)に聞いた話なので既に古くなっているかもしれませんが、日用品大手のアイリスオーヤマ(本社仙台市)は、中国国内の工場と日本国内の工場とで、同じものを造ることがあるそうです。特に園芸用プランターのように、積み重ねることで輸送時に個数ほどの容積を取らずにすむものは、中国で生産して日本に逆輸入しやすいとか。カラーボックスやミニチェストといった、個数に比例する容積を取るものはやや不利だというお話もありましたが。

 園芸用プランターは、都市圏でもマンションのベランダで使う需要が多く、ブームもあったので多くの個数が売れたと聞きます。中国でどんどん造って日本に持ちこめばたくさん売れる――かというと、そう単純でもありません。プランターは春先から初夏にかけて需要が特に増える季節性の商品で、つまり生産量を大きく変動させる必要があるからです。

 そこで同社は、中国ではなるべく一定量を生産し、追加で必要になる分を日本国内で生産することにしました。プランターはプラスチック射出成形金型で造りますから、中国での生産に用いたものと全く同じ型をもう1個用意し、日本で使うことにしたとか。当然、材料も共通です。

「(私)すると、全く同じものができるわけですか?」
「(アイリスオーヤマの方)全く同じです。違うのは『Made in どこそこ』の刻印だけです」

 さて、ここからは仮定の話です。日本製のプランターと中国製のプランターが、同じホームセンターの売り場に置かれていたとしたらどうでしょう。普通、どこの工場で造ったかというような情報は売り場に表示されませんが、たまたまあなたは気がついた。刻印に「Made in Japan」と「Made in China」の2種類がある。さて、どちらを買いますか?

 もう一つの仮定の話。売り場に日本製か中国製かが明示してあって、日本製は1割高い。ただ、情報はそれだけ(材料や工程が同じかどうかの明示はない)。さて、どちらを買いますか? さらに、5割高かったとしたらどうでしょう?

 ちなみにアイリスオーヤマは、「日経ものづくり」2010年11月号でお伝えしました通り、金型は海外で造っていますが、金型の設計は国内で実行しており、現地法人の担当者が金型の生産工程を厳しくチェックする体制にしています。技術的内容を任せっぱなしにしないことが、良質な金型を得るためのカギだとか。逆に言えば、放っておいても良いものができる(あるいはそう思わせてしまう)のが日本の財産だと思いますが、いかがでしょう。

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