これからの日本の人口減少は,しばらくは出生数減少より死亡数増加の効果が大きい。人口の多い世代が高齢化していくからである。団塊の世代が死亡年齢に達するころが,年々の人口減少数が最も多くなる。

  また出生数もしばらくは減少する。母親になり得る女性数が減るからである。これから25年ぐらいの間に,母親になり得る女性は,すでに生まれている。その数が減少することは,もうわかっている。その女性たち一人一人が多少多めに子供を生んだとしても,母親の人数が減っていくことによる出生数減少は抑えられない。

  この時期を通り過ぎると,様子が違ってくる。2040年を過ぎるころから,まず高齢化が止まる。団塊の世代がいなくなるからである。少子化対策がうまくいき,女性一人が生む子供の数が多くなれば,出生数増加が始まるかも知れない。そうなれば21世紀後半には,現在の予測よりは人口減少が緩やかになる可能性が,ないとは言えない。しかしその前,2030年代あたりに日本の危機がくる。

  2011年のいま,介護を受けている人の多くは「団塊の世代」の親の世代に属する。人口の多い団塊の世代が、はるかに人口の少ない自分たちの親の世代の介護を支えている。うまくいく構造である。これが2030年代になると,団塊の世代の人口大集団が介護を受ける側にまわる。それを支える世代の人口は,若くなるほど少ない。悲劇の構造だ。同じ悲劇が年金でも起こる。年金をもらう世代の人口は多くなり、年金を払う人口は減少の一途。この1930年代を、どう乗り切るか。

  人口減少は全国一様ではない。地方圏ほど急減する。首都圏人口は,それほど減らない(図2)。東北圏の人口は2050年には約40%減少する。同じ2050年に,全国の人口減少は26%である。これに対して,首都圏14%,東京圏は10%と減少幅が小さい。全体として人口が減少する過程で,東京・大阪・名古屋の都市圏に,人口は集中していく。

図2 圏域別人口の推移 国土交通省国土計画局「国土の長期展望に向けた検討の方向性について」(2010年12月17日)から 
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  以上の予測は,震災前の2010年のものだ。東北大震災と福島原発事故を経験した今後,東北圏の人口減少は加速するだろう。以前からの人口減少傾向に,避難の恒久化,放射能汚染を避けるための移住なども加わる。2050年人口が今の半分を下回る,あり得ないことではない。

  いわゆる過疎化も進む。限界集落や無人となる集落の増加もあり得る。町村単位での都市圏への移住なども考えられる。復興計画には,これらを意識せざるを得ない。

  これらの難問に比べれば,エネルギー問題は、はるかにマイナーである。後に見るように,エネルギー需要は確実に減少するからだ。