太陽光発電システムの市場が大きな節目を迎えている。その主因は、2010年に世界の約8割を占めた欧州市場が急激に縮小したことだ。代わって、ここに来て伸びているのは米国や中国の市場である。さらに、太陽光発電システムを選ぶユーザーの視点にも変化が見られる。これまでは初期コストに注目する人が多かったが、長期的な信頼性や収益性を重視するケースが増えている。

First Solar社は過去最高の販売、売り上げは下落

 2011年8月、米Solyndra社など米国の太陽光発電システム・メーカー3社が相次いで経営破綻に陥った。欧州市場の縮小によって、世界的に太陽光発電システムが供給過剰になり、単価下落から業績が悪化したからだ。加えて、欧州市場でシェアの高い中国メーカーが、縮小した欧州市場分を補おうと米国市場に攻勢をかけ、米国メーカーのシェアを奪ったことが背景にある。

 米最大手のFirst Solar社も2010年第4四半期(10~12月)以降、売上高が減っている(図1)。2011年第2四半期の販売量は前年同期比40%増の約483MW(メガワット)と過去最高に達したが、売上高は2010年第3四半期のピークに比べて33%減と大幅に減った。その結果、営業利益率は27%から12%へと悪化した。CdTe(カドミウム・テルル)型という、シリコンを使わないタイプの発電素子を使うことでコストを下げ、それを武器にこれまで順調に売上高を伸ばしてきたが、中国メーカー参入による価格下落までは避けきれなかった。

図1 米First Solar社の売上高と販売量の推移
図1 米First Solar社の売上高と販売量の推移
米First Solar社の決算データより日経BPクリーンテック研究所が作成

欧州市場の縮小が重くのしかかる中国メーカー

 攻勢を仕掛けた側の中国メーカーも、決して順調とは言えない。世界最大手の中国Suntech社の出荷量は、2010年第4四半期から3四半期連続で横ばいが続いている(図2)。米国市場の攻略で出荷量は維持しても、単価が下落している分、売上高は減少した。中国メーカーの成長は欧州市場の成長とともにあり、欧州市場の縮小は中国メーカーに新たな市場開拓を迫っているのだ。

図2 中国Suntech社の売上高と販売量の推移
図2 中国Suntech社の売上高と販売量の推移
中国Suntech社の決算データより日経BPクリーンテック研究所が作成

 欧州市場は、2008年までドイツやスペインを中心にフィード・イン・タリフ(FIT)制度によって急速に拡大した。一気に生産量が増えたため、太陽光発電システム向けのシリコン材料が足りなくなり、材料価格が高騰するほどだった。市場拡大に乗じて、中国メーカーが膨大な投資で生産能力を高め、規模を大きくした時期である。

 しかし2009年、スペインが政策を方向転換した結果、同国の市場が一気に縮小した。通年でみればドイツの市場などが拡大したので、スペインの落ち込みを補って欧州全体の需要量は維持された。しかしその裏で、メーカー同士の壮絶な闘いが静かに進行していた。