モロッコ太陽エネルギー庁長官のムスタファ・バクリ氏
モロッコ太陽エネルギー庁長官のムスタファ・バクリ氏

モロッコが、太陽エネルギーなどの再生可能エネルギー事業に大きく舵(かじ)を切り始めた。同国政府は2009年1月、太陽熱発電や太陽光発電などの太陽エネルギー発電設備を2020年までに少なくとも2000MW(メガワット)規模で導入する長期計画を発表。その第1段階として、モロッコの中央部に位置するOuarzazateに複数の発電設備をつくり、2014年までに500MW規模の発電を開始するのが当面の目標だ。

 具体的な動きも見えてきた。Ouarzazateに建設する最初の太陽熱発電所に対する入札が始まったのだ。この発電所は2014年の初めまでに稼働させ、125MW規模で発電する予定である。太陽光発電についても今後、導入量を増やしていく。

 砂漠に近い地域なので日照量は安定しているとはいえ、再生可能エネルギーの導入量が増えれば電力系統網の安定化(系統安定化)技術やスマートグリッド技術の重要性が必然的に高まる。こうした分野で高い技術を持つ日本企業にとって、参入のチャンスが広がる。実際、モロッコ政府は2010年12月、経済産業省など日本側と太陽エネルギー分野に関する協力覚書(MOC)を締結、太陽光発電を大量導入する際に必要となる系統安定化技術などを共同プロジェクトで推進することが決まっている。

 国内需要を再生可能エネルギーで賄うほか、欧州や北アフリカ地域で進む再生可能エネルギーの巨大プロジェクトに積極的に参加し、将来的には欧州へ再生可能エネルギーを輸出する計画も持っている。同国はエネルギー輸入国だが、再生可能エネルギーの輸出国に変貌しようとしているわけだ。

 モロッコの太陽エネルギープロジェクトの責任者であるムスタファ・バクリ氏がこのほど来日したのを機に、同国の再生可能エネルギー戦略を聞いた。

――モロッコが再生可能エネルギーに注力しているのはなぜか。

 モロッコは、日本と同様に石油や天然ガスなどの天然資源を持たない。このためエネルギー需要の95%を輸入に頼っている。一方でエネルギー需要は過去10年間、年率7%の割合で増えてきた。これに対応するため、ここ10年でエネルギーの供給能力を倍増させた。

 これは国内総生産(GDP)が毎年5.5~6%伸びているという経済発展に起因するものだ。今後10年を見ても、同様のペースで経済発展を遂げ、エネルギー需要も伸びるだろう。つまり、エネルギーの供給をさらに倍増しなければならない。これは大きなチャレンジだが、大きなチャンスでもある。

 経済発展を維持し、環境政策との整合性を保ちながら、国外へのエネルギー依存度を下げるにはどうするか。議論した結果、戦略的に再生可能エネルギーを導入していこうという結論に達した。