家庭のエネルギー消費量を格段に減らす手段として期待されている次世代住宅「スマートハウス」。その実用化が、足止めを食っている。

 東日本大震災の発生以降、トヨタホームやシャープなど国内各社は相次いで、スマートハウスの実証実験に取り組むことを発表した。電力供給に対する不安感から、住宅内のエネルギーを自給自足で賄いたいとのニーズが高まり、太陽光発電などによる「創エネ」、蓄電池による「蓄エネ」、家電の消費電力を制御する「省エネ」を連携させることで効果的にエネルギーを活用するスマートハウスへの期待が一気に膨らんだ。

 実用化に向けた動きは加速しているように見える。ところが、肝心の創エネ、蓄エネ、省エネの連携が、遅々として進まない。テクノアソシエーツが独自に調査した結果によると、その原因は、家電メーカーや電池メーカーの間で機器制御の通信規格が統一されていないことにある。

すべて連携しないと意味がない

 繰り返しになるが、スマートハウスがその機能を発揮するには創エネ、蓄エネ、省エネのすべての連携が欠かせない。こうした連携を支える中核技術が、太陽光や蓄電池、家電などの構成要素を統合管理する「HEMS(home energy management system)」である(図1)。

図1●「スマートハウス」の構成要素例 (出典:「HEMSアライアンス」の2011年7月12日付の発表資料)
図1●「スマートハウス」の構成要素例 (出典:「HEMSアライアンス」の2011年7月12日付の発表資料)

 HEMSの心臓部となるコントローラは、太陽電池の発電状況や家電の電力消費状況に応じて、エネルギーを最も有効に活用するべく時間ごとにきめ細かく制御する。例えば、雨が降り始めて太陽電池の発電量が減った場合に家電の電力使用量を抑えたり、天候の変化を予測して前もって蓄電池に電力をためておいたりといった制御を自動で行える。

 逆にそれぞれが連携しないと、単に省エネ家電で電力使用量を10%削減するとか、電力料金が安い夜間に蓄電して昼に使うといった微々たる経済効果しか期待できなくなってしまう。

 現状では、こうした住宅の設備や家電を一括して制御することは難しい。機器を接続する際の通信プロトコルやインターフェースの情報がメーカーごとに異なるためである。このため、実証実験の多くは設備や家電を同じメーカーにそろえるか、その都度、個別にコストと時間をかけて開発している。

 しかし、実証実験から事業化フェーズに移る段階になったらそんなことはしていられない。通信方式がバラバラだと、本来のHEMSの付加価値ではないところで開発コストや時間がかかってしまい、現実的ではないからだ。スマートハウスを次の事業の柱として掲げたい住宅メーカーも「技術的には問題ない。規格を統一してもらえれば開発が進むのに」(国内大手住宅メーカーの開発担当)と、いらだちを隠さない。