プロジェクトの成否と技術者力の相関

図4:技術者力とプロジェクト成否の相関
図4:技術者力とプロジェクト成否の相関

 上の図4は、実際のプロジェクトの成否に対し、そのプロジェクトに関わったマネージャー・メンバーと技術者力との相関を示したものである。(一般に設計開発プロジェクトの成否は主にQCD: Quality , Cost , Deliveryの達成によって定義されるが、ここでのプロジェクト成否の数値はそれらを総合的に捉えたものである。)

 プロジェクト成否と技術者力はかなり高い相関がみられる。良いプロジェクトが良い行動特性(技術者力)を生むのか、良い行動特性が良いプロジェクト成果を生むのか。おそらくは相互に影響を及ぼしあっており、良い成果は技術者力を高め、さらに良い成果を収める好循環が回っていると考えられる。

 裏を返せば、失敗したプロジェクトではエンジニアは技術者力を高める事が出来ず、次の成果も芳しくない、といった悪循環が回っている恐れがある。いつもプロジェクトのQCD達成が困難、という組織の要因の一つはここにあると考えられる。

 悪循環を断つ、というのは非常に困難な行為である。なにしろすでに問題が起きているのだから、改善のための余力が残っていない事がほとんどだ。そのため、まずは失敗を防止し、その上で次の策を検討したい。では失敗を防ぐためにどこから手を打つべきなのか。

 そのヒントもデータの中にある。

図5:プロジェクト成功の職層別技術者力と、失敗の職層別技術者力
図5:プロジェクト成功の職層別技術者力と、失敗の職層別技術者力

 プロジェクト成否と、技術者力にはかなり高い相関がみられると先に述べたが、メンバー層、技術マネージャー層の視点で切り分けて整理したのが上の図5である。プロジェクト成否指数上位20件の平均を「成功したプロジェクト」、下位20件の平均を「失敗したプロジェクト」、それ以外を「平均的なプロジェクト」と定義し、メンバー層、マネージャー層別に平均値をプロットしている。

 この図で、失敗プロジェクトと平均的なプロジェクトに着目して比較すると、メンバー層の技術者力は失敗プロジェクト⇔平均的なプロジェクトの間では大差はないが、技術マネージャー層の技術者力には差が見られる。「成功に導くため」には、全体の技術者力が必要であるが、「失敗させないため」には、まず技術マネージャーの技術者力が重要であると考えられる。

 もし、失敗するプロジェクトが多いと考えられるならば、まず技術マネージャーの技術者力・行動特性改善を企図すべきである。

 その上の高みを目指し、成功を納めるためには、技術マネージャー層のみならず、全体の技術者力・行動特性向上が必要と考えられる。