有機ELパネルは、次世代ディスプレイの有力候補と目されている。しかし、コストの課題を克服できず、パネル価格は高止まりしている。有機ELパネルが将来成功するか否かは、大型化と歩留まり向上に大幅な進展を見いだせるかどうかにかかっている。有機ELのビジネス・チャンスの第一波は、現在のスマートフォン、携帯型ゲーム機、デジタル・カメラなどのハイエンド製品である。第二波として有機ELテレビのビジネス・チャンスが、2015年以降に到来する可能性がある。

 有機ELの企業間の競争を見ると、現在は、韓国メーカーが世界をリードしている。Samsung Mobile Display(SMD)社がスマートフォン、タブレット端末、デジタル・カメラなどを製品ターゲットとしており、LG Display社は有機ELテレビに重点を置いている。また、将来を見据えて、SMD社はフレキシブル有機EL技術に、LG Display(LGD)社は大型有機ELパネル技術にそれぞれ挑戦している。これまで韓国は日本の製造設備と材料の技術力を借りながら、自社グループ内の関連設備や材料の技術力を育成してきた。この結果、現在は、自社グループ内に有機ELのサプライ・チェーンを確立している。

 われわれIEKは、日本企業は台湾と戦略的パートナー関係を構築し、台湾のリソースを借りて、有機ELビジネスで共に成功できるような方策を取るべきだと考える。将来的には、日本と台湾が共同でフレキシブル有機ELディスプレイや有機EL照明の技術開発を進めることが、両地域における有機EL産業を成功に導く決め手になるだろう。

有機ELパネルの技術と市場

(1)性能面での潜在能力は高いが、コストが普及の壁に

 有機ELパネル技術への期待は、以前から高い。自発光、高コントラスト、色彩の鮮やかさ、広視野角、高速応答、薄型・軽量などの長所から、「次世代のパーフェクトなディスプレイ」と高く評価する向きも多い(図1)。

 ただ、TFT液晶パネル技術の進展も目覚ましく、時間が経つにつれて、有機ELは消費者にとって大きな驚きではなくなってきた。有機ELは現在、その価格性能比から、ハイエンド製品にのみ使われている状況にある。主な原因は、コストの課題を克服できずにいるためである。有機ELの材料とプロセス技術に大きな進歩がなく、パネル価格は高止まりしている。そのため、応用も小型に限られている。

図1 有機ELの構造と性能の比較
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