2009年、中国が「新車販売台数」で世界一になったことが大きなニュースとして報じられた。米国が金融危機の影響で1000万台を割り込む一方、中国は1300万台を超えたのである。それでも現状では中国の自動車普及率は、先進国に比べれば非常に低い。経済成長とともに、これからも販売台数は伸び続けるだろう。成長の著しいインドがこれに続く。

 振り返ってみれば、新しく生産される自動車のほとんどは、これまで全世界の15%に当たる先進国で消費されてきた。中進国や新興国の人々が自動車を欲しなかったわけではなく、高価で手が出せなかったのだ。しかし、グローバル化による世界経済の底上げで、新興国でも自動車が買える人たちが増えてきた。この、新たなモータリゼーションを受け、自動車産業は大きく様変わりし始めている。

中国とインドで年間1億台の自動車が必要に

 図1は、2008年における主要国の自動車保有台数を示している。人口100人当たりでみると、米国は約80台、日本は約60台、欧州は50~70台程度。ロシアやブラジルなどの中進国では、10~20台を保有している。一方、中国は3.8台、インドは1.5台に過ぎない。ここからも、消費の中心が先進国である現状を見て取ることができる。

 その大きな理由は先にも述べた通り、従来の先進国基準の自動車が1台200万~300万円、安いものでも100万円近くする非常に高価な品物だったからである。しかし、新興国では、これまで先進国でしか作れなかった様々なものが自力で作れるようになってきた。これによって、自動車の価格は大きく下がってきた。現在の中国で走っている自動車の大半は50万円以下だし、インドの低価格車「ナノ」は20万円以下で購入することができる。

 経済成長によって、新興国の購買力は年々高まっている。さらに携帯電話やインターネットの普及で様々な情報が得られるようになり、欲求もかつてないほど喚起されている。中国では、2009年に約1700万台もの二輪車が生産され、それ以外にも電動バイクが年間2000万台以上も市場に出回っているそうだ。さらに経済的に豊かになり、購入価格も1ケタ近く下がれば、屋根が付いていて荷物をより多く運べるものへの移行、すなわち二輪車から「自動車」への乗り換えが進むのは当然のことだろう。

 では、中国とインドで自動車が欧米の約半分である「100人当たり30台」程度まで普及するとしたら、何台くらいの自動車が必要になるだろうか。中国とインドの人口は合わせて約25億人。単純計算で7.5億台となり、耐久年数を7~8年と仮定すれば、年間で約1億台が必要となる。先進国の人口は、全部合わせても10億人に過ぎない。現在の世界の自動車市場は6000万台といわれているが、これは先進国が消費の中心という前提である。その2.5倍の人口を抱える中国とインドで本格的にモータリゼーションが起これば、ここだけで1億台以上の需要が出てくる計算になる。

図1 未来予測レポート 自動車産業 2011-2025
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