2011年7月の台湾電子セクター上場企業各製品分野の代表的企業41社の売上高は前年同月比(YOY)+5.3%、前月比(MOM)-0.2%。ドイツ証券(以下「当社」)では全体でMOM横ばい~1割弱程度の増加、例年より弱めの状況を想定していたため、実績は想定レンジ下限を若干ながら割り込む結果となった。

 本来は2011年第3四半期に向けて受注・売上が上向くタイミングであるにもかかわらず、今年は全体的に悪化傾向にある。7月に入ってからの主要市場における株価下落、マクロ景況悪化懸念などが、エレクトロニクス製品のサプライチェーン全体を更に収縮させつつある。欧米諸国では主要製品の最終需要は弱含みの推移が続いていることに加え、Back to Schoolや年末商戦の見通しも更に慎重な見方が増えてきており、小売→セットブランド→部品→材料と連鎖の輪が広がりつつある。こういう状況下では、コストに占める償却費の割合が高く、高稼働率維持が収益確保の基本である、資本集約産業である川上の部品、材料メーカーにより強い逆風となる。本来は一番川上の材料メーカーへのインパクトが最も大きいはずであるが、実際には部品メーカー、特に半導体メモリー、液晶、太陽電池、LEDなどへの影響が大きい。

 理由は簡単。参入企業が多く、コモディティ化も進んでいるため、川上の材料と比べ需給悪化時の価格下落速度が速く、その程度も非常に大きいためである。09年後半から主要企業が積極的な能力拡張を続けている分野が多く、足元は供給能力が需要を大きく上回ってしまっているのが実情である。当面は、供給抑制により供給過剰や在庫堆積を防ぐことが可能か否か、中長期的には投資抑制や競争力のない旧工場などの閉鎖、他分野への転用(液晶用カラーフィルタ→タッチセンサなど)を進めることができる分野とできない分野で、向こう1年の収益に大きな格差が生じる可能性が高い。

 アプリケーション別需要の状況にも大きな変化はない。想定ほど悪くないのがマザーボード(MB)、デスクPC関連、そしてカーエレクロトニクス関連は震災影響が想定ほど大きくなかったという意味で上ぶれが続く。デジタル・スチル・カメラ(DSC)関連は数量が今一つだが、震災影響で供給が絞られているため、想定ほど価格下落が進んでいないことにより、サプライチェーン全体が恩恵を受けている。

 一方で、ノートPC、フラットパネルテレビ、携帯電話などの主要アプリケーションは軒並み想定を下回る状況が続いている。

ただし、事業環境の悪化はサプライチェーン全体に認識されている上、製品を販売・調達する主要ブランドは概ね年末商戦についても慎重な姿勢を採りつつある。また、供給側である川上の部品メーカーも過度な期待を抱かずに需要見合いの生産を行い、在庫リスクの回避に腐心している。このような状況では、短期的な収益モメンタムの回復は望みにくいものの、「思ったほど悪くない」製品については、年末にかけて「急単(Rush Order)」が舞い込む可能性もあり、アップサイド要因として作用する可能性がある点には留意したい。加えて、川上の部品分野では、製品価格がキャッシュコストを割り込む水準に低下しているものも少なくなく、短期的に状況が改善する可能性は低いだろう。個別企業のコスト競争力のみならず、財務体力(この状態にどの程度耐えられるか)にもその注目が集まろう。また、業界再編機運も高まる可能性があり、併せて注目したい。