これからエネルギー、石油を含む天然資源、食料など、あらゆるものが足りなくなっていく。その大きな引き金となるのは、中国とインドでの人口増加。この2カ国だけで、25億人を抱えている。そこに、「新興国の経済発展」という要素が加わり、問題はさらに深刻なものとなるだろう。

 世界は「このままでは破綻する」との不安をつのらせ、国、社会、そして企業を「永続的に存在できるようにすること」に腐心しはじめた。「サスティナビリティ」があらゆる階層で最重要課題として浮上してきたのである。こうした課題を乗り越え、持続性を獲得するためには、社会全体、世界全体の枠組みを大きく変える必要があるだろう。つまり、今の延長線上に未来はないということだ。

エネルギー需要は2025年には現在の2倍に

 図1は、世界全体のエネルギー需要が今後どのように変化するかを予測したものである。注目すべきは、2025年には2010年比で2倍近くまでエネルギー需要の増加が見込まれること。その主因は、中国とインドにおける大幅な需要増大にある。中国のエネルギー消費量は、2000年から2010年にかけて2倍以上増加し、米国と並んだ。今後もそのペースが減速することはなさそうだ。

 予測にあたって重視したのは「人口増加」「経済成長」「エネルギー効率化」の3点である。人口が増えれば、それだけエネルギー需要は増加する。経済成長によって豊かになれば、エネルギー消費量もまた増えていく。一方で、先進国ではエネルギー消費の削減や効率化が強く問われるようになり、需要は右肩下がりになるはずだ。

図1 未来予測レポート エネルギー産業 2011-2025
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太陽光発電は基幹エネルギーにはならない

 拡大し続ける電力需要をどのような手段で確保していくかを予測したものが図2である。ここで注目いただきたいのは、化石燃料の割合は減らせたとしても、絶対量はむしろ拡大する可能性が高いということである。こうした状況に対応するため、各国は「サスティナビリティ(持続可能性)」を至上命題として、「脱化石燃料」の取り組みを本格化させることになるはずだ。

図2 未来予測レポート エネルギー産業 2011-2025
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 「持続可能」を第一に考えれば、水力や再生可能エネルギーをできるだけ増やすのが最善の策である。ただ、水力発電は、設備を設置できる場所が限られ、建設にも長い年月を要する。エネルギー需要の急拡大、さらには「資源ナショナリズム」が強まる中で、各国は再生可能エネルギーの割合を懸命に増やそうとするだろう。

 折しも日本では、菅直人首相がエネルギー政策の転換を宣言し、再生可能エネルギーを基幹エネルギーに加えると世界に向けて表明した。ただ筆者は、はたして菅首相が基幹エネルギーの意味を分かっているのか疑問に感じている。おそらく日本は、短絡的に太陽光発電の普及を一気に加速させようとするだろう。それはそれで良いことだと思うが、太陽光発電は決して基幹エネルギーにはなり得ないと考える。今、大規模太陽光発電所(メガソーラー)の取り組みが盛んに行われているが、1メガワット(1000キロワット)の発電には約1.5ヘクタール(15000m2、約4500坪)の用地が必要とされる。一方、現在の原子力発電は、1基でおよそ1000メガワット(100万キロワット)だから、それに換算すると相当な広さの土地を要することが容易に分かる。

 メガソーラーだけでなく、公共施設や産業用、あるいは家庭向けの太陽光発電システムなどへの関心も急速に高まっている。筆者は、太陽光発電はどうやっても基幹エネルギーにはならないと考えるが、その普及をムダな努力だと否定しているわけではない。1%でも電力を生むために消費するエネルギーを減らすということは、資源に乏しい日本にとって非常に意味があることだろう。

 風力発電は、化石燃料以外のエネルギーとしては最も採算性が高いといわれている。しかし、日本で風力発電が普及する可能性は低いだろう。日本では台風が接近することが前提となるため、設備がそれに耐えられるようにすると、コストが割高になるからである。国土が狭く山間部が多い地形であるため、設置場所も限られるという事情もある。平地の確保が難しく、無理に風車を立てれば景観を損ない、騒音の問題も深刻になる。