(1)認知すること

 私たちは、俗に言う外界を眺めて、そこからいろいろな事象(事物と現象)や状況などについての情報を受け取り、その情報を基に思考したり行動したりします。これは私たちが持っている目や耳を代表とする受容器によって情報を受け入れて、いわゆる外界を認知することであると言います。その際、五感という人に備わった受容器が重要な働きをしますが、五感が勝手に働くのではありません。

 五感について説明します。目の働きの視覚、耳の働きの聴覚、舌や口の働きの味覚、鼻の働きの嗅覚、皮膚や関節などの働きの触覚や運動の感覚です。これらは外界の情報を取り込むための器官ですが、脳が関与しているのです。さらに、私たちは外界だけでなく、自分の頭の中にある情報(記憶されている知識や知恵を指します)も呼び起こし、合わせて認知に役立てます。
 
 認知は、新しく入ってきた情報(新規情報)も、元々持っていた情報(既知情報)も、見直した情報(再解釈情報)も、すべてを使って、言い換えれば可能なものすべてを総動員して行なわれる知的活動(脳が関与している活動)なのです。

(2)人間の情報処理モデル

 今はこうした人間の認知を理解するための「認知心理学」が発達したので、私たちの頭の中での情報がどのように処理されるかに関するモデルもできています。いわゆる脳の「情報処理モデル」です。

 このモデルを使って考えてみると、私たちは外界からの情報を受容器という器官を通して受け入れます。その情報が、まず脳の短期記憶装置に入りますが、たいていのことは気にせず、すぐに忘却します。忘却したということさえ、記憶していない場合が多いのです。

 とはいうものの、気になったこと(気付いたこと)はピックアップして、次のステップである脳の作業記憶装置に取り込み、そこで「言葉」という引き出し語を付けて、脳の長期記憶装置に貯蔵すると言われています。

 何かのきっかけで新たな情報が入ると、長期記憶装置から引き出し語という言葉で情報を取り出し、受容器から入った情報と前から持っていた情報を作業記憶装置の中であれこれと加工し(思考し)、その結果を必要に応じて出力します。

 出力には、言葉もあり、動作である身体の動きもあり、目の動きも表情もあります。もちろん、言葉や動作などは意思に基づいて行なわれるのです。このように説明できるのは、人間の情報処理のモデルを使った結果なのです。