もちろん、謙遜の弁であろうけれど、二足どころか、島田氏にかかるとどんなテーマでもたちまち専門分野になってしまいそうな気がしてくる。それだけのエネルギーに満ちた人物だ。

獣害対策もLEDで
緑色と青色のLEDが点滅する
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 医学部の教授として呼吸器外科の研究室を統率しながら、専門外の工学の分野で発明を続ける島田氏とは、どんな人物なのか。どんな生い立ちをたどると、マルチに活躍する専門家が出来上るのか。聞いてみたいことは、いろいろとあった。「なぜ外科医を志したのか」「どのようなキッカケで、外科医が発明家になり、ベンチャー企業を立ち上げたのか」「現在の医療や医療教育について課題や提言はあるか」などなど、マルチな才能への興味は尽きない。その素顔に触れてみたいと思い、以前から教授とのインタビューを楽しみにしていた。

 我々が研究室のテーブルに付くと、島田氏は論文を書く手を休め、丁寧にインタビューに答えてくれた。というより、こちらから質問する前に次々と「意見」が飛び出してくる。日ごろから頭に詰まった知識や考えが、まるではじけ飛ぶような勢いである。思わずじっと聞き入って、ノートを取り続けた。

圧力や批判も、巧みに成長の材料に

 立ち上げたベンチャー企業を「ヤンチャーズ」と名付けたのは、まさに我が意を得たりの感がある。実際、かなり“やんちゃ”な人物だ。話を聞くと、少し危うさを感じるところもある。だが、そのエリート然としない部分が人間らしい魅力につながっている。

 興味を持ったことは、思い切り良く全精力を注いでまい進する。少々はみ出しても気にしない。周囲の圧力や批判も、巧みに自分の成長の材料として飲み込んでしまう。島田氏は、そうした打たれ強さを持った人物に見える。

 なかなか止め時が見つからないまま、インタビューは3時間にも及んだ。

 インタビュー前の「頭脳明晰で運にも恵まれたエリートとして、真っすぐな道をばく進してきた人物」というステレオタイプな予想は、いい意味ではずれた。実際は、結構余裕を持って、楽しみながら寄り道をしてきた人物だった。

 話を聞けば聞くほど、「好奇心の人」島田氏が歩んできた道のりは紆余曲折、決して成功への一本道ではなかったことが分かってきた。

(次のページは、島田氏に聞く「発明を志した理由」)