以上のことから、三洋ブランドは、米国や中国においてはWalmartと国美電器への窓口という意味でその価値は言うまでもなく、その他の地域においてもローエンド・ブランドとして活用できる余地がある。パナソニックが自社でPDPや液晶パネルの工場を保有する限り、出荷先の間口は広げておく方が得策だと考えられる。

有機ELへの投資

 パナソニック社長の大坪氏は、大手メディア(日経BPなど)の取材において「テレビ向け有機ELパネル生産拠点への投資の可能性」を何度も言及してきた。同社は、研究所においてアクティブ型有機ELパネルの試作ラインを保有しており、低分子と高分子の両タイプの研究開発を進めていると見られる。ディスプレイ向けについては、中小型向けではなく大型向けでの参入可能性を示唆しており、その帰趨が注目されている。

 業界全体における第7世代以上の大型向けアクティブ型有機ELパネル工場への投資については、試作ラインへの投資はあっても、本格的な量産ラインの稼働はかなり後ろ倒しになる可能性が高い。このようにわれわれは見ている。プロセス・材料技術の未成熟、膨大な投資コスト、既存工場の余剰生産能力の存在などがあるためである。量産工場は、完全な新規工場ではなく、既存の第7~8世代の液晶パネル工場に酸化膜工程を導入する形が多くなると見る。EL工程については、低分子の蒸着や高分子のインクジェットなど様々な方式が試されることになるだろうが、最終的には量産時のコストで有利な高分子タイプが主流になる可能性が高いと見ている。

 業界全体の量産時期の遅れは、即座の投資が難しいパナソニックにとってポジティブな流れであると、われわれは考えている。また上記の既存液晶パネル工場を再活用する流れも、同社が茂原工場と姫路工場を持っているため、これらの工場を再活用することによって投資コストを圧縮できる点でポジティブである。同社は、PDPや液晶パネルにおいて多額の減損処理を余儀なくされたことから、大胆な投資の実行に対する躊躇(ちゅうちょ)はあるだろうが、慎重を期しつつも絶好の機会を逸しない経営判断を望みたい。