MEMS市場が新たな成長期に入った
以前のMEMS市場は、フロントプロジェクタ用DLP(digital light processing)とインクジェット・プリンタ用プリント・ヘッドが2大けん引役だった。2008〜2009年には、この二つがいずれも低迷してMEMS市場は苦境に陥っていた。フロントプロジェクタ市場の低迷とカートリッジ・リサイクルによるプリント・ヘッド販売数量の低迷である。しかし、今後のMEMS市場は新たな成長期に入ることが予想される。年平均成長率で2ケタ成長が期待できるだろう。
例えば2011年のMEMS市場は、半導体市場をしのぐ成長を見せることになるだろう。この年のMEMS市場は売上高で対前年比+8.8%の77億3000万米ドルに達する一方、半導体市場は同+7%と見られているためである。ただし、2010年のMEMS市場は同+21.9%の71億280万米ドルであり、同+30%を超えた半導体市場に及ばなかった。その後、MEMS市場は2ケタ成長を続け、2015年には113億4080万米ドルに達する見込みだ。つまり、今後数年間にわたってMEMS需要は増加し続けることになる。
プロジェクタやプリンタに替わってスマートフォンなどがけん引
このような成長を支える要因の一つが、MEMSを搭載したスマートフォンの急増である。携帯電話機向けMEMSの売上高は、2009年の6億米ドルから、2015年には5倍近く増加して30億米ドルに達すると予想している。このキッカケを作り、MEMS市場にとって重要なマイル・ストーンになったのが、米Apple Inc.の「iPhone 4」だ。iPhone 4は、携帯電話機で初めてMEMSジャイロスコープを搭載した。さらに音声の雑音を低減するために2個のMEMSマイクを内蔵している。iPhone 4は携帯電話機業界に多大な影響を及ぼし、Apple社の動きに追随した携帯電話機メーカーがこぞってMEMSを搭載したスマートフォンを発表した。
MEMSジャイロスコープを搭載した携帯電話機は、2010年は5機種に満たなかったが、2011年にはタブレット端末も含めると45機種以上が発表される見込みである。タブレット端末も、今後はMEMSにとって重要なアプリケーションになっていく。既に米Motorola Mobility, Inc.や台湾Acer Inc.などのタブレット端末には、MEMSを使った加速度センサ、ジャイロスコープ、BAW(bulk acoustic wave filter)フィルタ、圧力センサなどが搭載されている。また世界各国のスマート・グリッド政策により、スマート・メータ向けのMEMS流量センサやMEMS加速度センサの需要が急増する見込みである。MEMSは、今後の省エネルギー社会、高齢化社会を支えるためのキー・デバイスになっていく。
一方、地域別に見ると、経済が発展しているBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)を中心に新興国でMEMS需要が急増する見通しである。このうち中国では、車載向けMEMSセンサの売上高が2009年から2014年にかけて爆発的な成長を遂げる見込みだ。また中国やインドでは、教育分野向けフロントプロジェクタ市場が立ち上がり、DLPが再びMEMS市場をけん引するようになるだろう。このほか、新興国では光ファイバを使った高速通信インフラ整備政策が進められており、これによって光ファイバ通信向けMEMS需要を刺激するものと見られる。
デバイス別では加速度センサ、圧力センサ、ジャイロスコープが伸びていく
デバイス別にMEMS市場を見ていくと、2010年にはインクジェット・プリンタに使われるカートリッジ用プリンタ・ヘッドが、MEMS市場全体の約22%を占めて最大市場だった。しかし、ここ数年プリンタ・ヘッド市場は縮小を続けている。逆に、ここへ来て急成長しているが加速度センサだ。携帯端末やゲーム機に使われて市場規模が急拡大、2012年以降は最大市場に躍り出るだろう。これに続くのが圧力センサとジャイロスコープである。圧力センサは、車載分野のあらゆるところに入り込み、2015年には第2位の市場規模に達すると見る。ジャイロスコープも、ゲーム機やカメラなどに支えられて市場を拡大、第3位に浮上すると予想している。
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