図1●スイスLandis+Gyr社製スマートメーターの例
米国サンディエゴ市で2011年2月1日~3日に開催された、電力・ガス・水道などの公益事業関連の展示会「DistribuTECH」で日経BP社が撮影
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 東芝が2011年5月19日、スイスLandis+Gyr社の買収を発表した。Landis+Gyr社は、約30の国や地域で事業を展開し、8000以上の顧客にサービスを提供しているスマートメーターのトップ企業である。これまでに約500万台のスマートメーターを販売した実績を持つ(図1)。世界のスマートメーター市場では知名度のなかった東芝だが、Landis+Gyr社を買収することで一気に世界的なプレーヤーとしての存在感を放ち始めた。

 スマートメーターとは、通信機能を備えた電力メーターで、電力会社とデータをやり取りしたり、家電製品とつながってそれを制御したり、消費者に現在の電力料金や使用量を伝えたりするためのキーデバイスである。スマートメーターが備える機能を活用することで、再生可能エネルギーの大量導入やスマートグリッドの構築が格段に容易になる。つまり、このところ世界的に活発になっている再生可能エネルギーの導入やスマートグリッドの構築の前提条件になるのがスマートメーターで、それがこの買収劇の背景にある。

 現在、電力メーターの世界設置台数は約17億台であり、2020年までには20億台を超えると見られている。スマートメーターは、寿命が約10年であるから単純に計算すると2020年には年間2億台が販売されることになる。

 現在の日本のスマートメーターは数も少なく高価なつくりのため単価が3万円以上もするが、中国では既に5000円程度で販売されている。世界平均では1万円程度と見積もられる。2020年までに半分の価格の5000円と低く見積もっても、世界全体のスマートメーター市場は1兆円に達する。これはメーター単体の市場であり、実際にはスマートメーターと電力会社をつなぐネットワーク構築費もこれに加わり、スマートメーターを取り巻く市場はもっと大きい。

2020年に向けて急速に普及

 スマートメーターは、欧州、米国で普及が始まっている。最も進んでいるイタリアやスウェーデンでは、ほぼ全戸に設置が完了している。それに続き、フランスやイギリス、スペインでは2020年までに全戸導入する計画。EU指令では、2020年までに全体の80%の電力メーターをスマートメーター化することを各電力会社に要求している。

 欧州でのスマートメーターの導入は、盗電対策のほか、風力発電などの再生可能エネルギーによる不安定な発電に対応したスマートグリッドの構築を目的としている。

 米国のスマートメーター設置台数は、2009年に1000万台を超えた。2013年には5000万台を超えて、全米の約30%に達する見通しで、2015年には50%、2020年には100%を目標に掲げている。