「あなたはエネルギーを作る人、私は使う人。私は管理する人」

 これまで20を超える省エネルギープロジェクトを担当してきた。そんな中、部門や立場による省エネの捉え方や意識の壁が、プロジェクトの推進を邪魔しているという実態が多いことに気づく。

 「あなたはエネルギーを作る人、私は使う人。私は管理する人」

 こんなことを実際に口走ることはないかもしれない。ただし、どこか潜在意識として思い当たる節がある読者も少なくないのではないだろうか。品質条件や設備の効率をギリギリまで詰めながら省エネに取り組んでいる一方で、こんな「壁」を理由に改善や改革が進まないのは大変もったいないことである。

製造部門は省エネがキライ?

 製造部門の本質は、積極的に省エネを行うことではない。安全に、所定の品質のものを、最適な手段でつくること。これこそが第一使命である。その一方で、「地球環境に配慮して作ること」という条件が、使命の一つになっていることも事実である。

 しかし、ものづくりの環境は厳しくなる一方だ。高まる品質条件、少量多品種化、生産効率向上、少ないオペレーター・・・。世代が交替する中で技術技能伝承に取り組み、若手の育成をしながらなんとか回している、といった現場もあるだろう。

 製造部門は、省エネがキライなのではなく、省エネどころではないと認識しているのだ。省エネを推進する立場の人は、このことをまずはよく理解しておく必要がある。

品質なくして省エネなし、のウソ

 製造の第一使命は前述の通りだが、品質の課題が完全にクリアになるまで省エネができないのでは成果はあがらない。広義に捉えれば省エネが進まないだけでなく、ものづくりの持続性に関わる競争力の低下にもつながりかねない問題だ。

 省エネ改善の狙い目が、品質リスクがある領域であれば「製造部門としては、今はとても対応できない」と言うかもしれない。しかし、品質に関係が少ない領域にも無駄は存在しており、それらは即実施可能な改善案も多い。